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- ■鉄塔火災被害の調査方法について(No.74)
- 概要
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鉄塔が火災を受けた場合に,温度が高温にまでさらされると鉄塔構成材は火災を受ける前と比べ強度特性が低下することがある。また,高温にさらされた後,常温に戻った状態でも強度特性が低下したまま回復しないことがある。
したがって,火災を受けた鉄塔の被害の調査・診断を行うには,火災被害時に鉄塔構成材が到達した最高温度である受熱温度を推定することが重要である。受熱温度を推定することで鉄塔構成材の強度の変化を推定することができる。
更に,鉄塔構成材は製造時の熱処理の違いにより,焼入れ焼戻しの熱処理を施した調質鋼と,そうでない非調質鋼に分かれるが,この材料種別(調質鋼/非調質鋼)により火災時の強度の特性が大きく異なる。一般に,調質鋼の方が受熱温度が低い場合でも強度の変化を受けやすい傾向にある。
そこで,本稿では,土木学会が発行した文献などを参考に,火災による強度特性の変化や受熱温度の推定に関わる知見を整理して,火災被害を受けた時の鉄塔構成材の調査・診断方法についてまとめた。
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- ■JASS6および関連指針の改訂内容について(No.67)
- 概要
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「日本建築学会:建築工事標準仕様書 JASS6 鉄骨工事」および関連指針(日本建築学会発行)の同時改定が2018年1月に行われた。その改定のうち,当社に関連の深い内容は次の2項である。
@溶融亜鉛めっきした部材の摩擦面処理は,ブラスト処理のみが標準仕様として定められていたが,改定を受け,りん酸塩処理も加えられることになった。
A高力ボルト接合の孔あけ加工は,従来はドリル孔あけに限定されていたが,改訂を受け,JASS6に沿った特記がある場合または工事監理者の承認を受けた場合は,レーザ孔あけが認められた。ただし,レーザ孔あけの施工には特有の注意すべき点があり,ボルト孔の適用にあたって適正な精度管理を行う必要がある。
そこで,本稿では,溶融亜鉛めっき部材の摩擦面処理およびレーザ孔明けの注意点について紹介する。
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- ■溶接部の内部きずの非破壊試験(No.66)
- 概要
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非破壊試験とは,“物を壊さずに”その表面のきずや内部のきずの有無を調べる試験です。
特に金属製品においては溶接部の欠陥の検出に用いられ,溶接部の検査はJISの認めた技術資格が必要で,なおかつ,溶接についての十分な知識と経験を必要とします。
前回は,非破壊試験の中から表層部試験(磁粉探傷試験,浸透探傷試験)を紹介しました。今回は,内部試験(超音波探傷試験,放射線透過試験)について紹介します。
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- ■表層部きずの非破壊試験(No.65)
- 概要
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非破壊試験とは,“物を壊さずに”その表面のきずや内部のきずの有無を調べる試験です。
特に金属製品においては溶接部の欠陥の検出に用いられ,溶接部の検査はJISの認めた技術資格が必要で,なおかつ,溶接についての十分な知識と経験を必要とします。
今回は,その非破壊試験の中で表層部試験(磁粉探傷試験,浸透探傷試験)について紹介します。
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- ■溶融亜鉛めっき鋼材の水素脆性割れについて(No.64)
- 概要
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鋼橋や鉄塔などの鋼構造物への防錆手法のひとつに,溶融亜鉛めっきがある。過酷な冷間加工が施された鋼材や熱応力ひずみを生じやすい溶接施工された鋼材は,溶融亜鉛めっきを施す際に割れを生じる可能性がある。そして,その割れには以下の2種類が存在する。
- @亜鉛浴中で生じる液体金属脆化割れの一形態とされ,溶接部の残留応力や亜鉛浴中での熱応力が要因で発生する「亜鉛めっき割れ」
- A溶融亜鉛めっきの前処理として行う酸洗過程で水素原子が鋼中に吸収されることにより引き起こされる「水素脆性割れ」
本稿では,このうちの酸洗過程で生じるA項の「水素脆性割れ」について,その発生機構,発生要因ならびに防止方法の概要についてまとめた。
@項の「亜鉛めっき割れ」については,本誌の別テーマで取り上げているので合わせて参考にしていただければ幸いである。
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- ■コンクリートの破壊・非破壊試験(No.52)
- 概要
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本来,コンクリートは材料選定,配合設計,施工,養生を適切に行うことで高耐久性を有する材料である。しかし,設計時には把握できていなかった劣化因子が作用した場合や適切な施工等が行われなかった場合には,コンクリートが要求されている耐久性能を満たしていない場合がある。
また,鉄筋コンクリート構造物(以下,RC構造物)のコンクリートの耐久性は,それ自体の耐久性だけでなく,内部の鋼材(主に鉄筋)の腐食によっても影響し,構造耐力に直結する問題となる。したがって,RC構造物は,長く運用するための適切な維持管理が必要となる。
一方,鋼材が主要構成材である鉄塔でも,基礎体や局舎などのRC構造物上に建設したり,コンクリート充填鋼管(CFT)の材料としてコンクリートやモルタルを使用しているため,コンクリートの劣化や内部欠陥は無視できず,RC構造物同様,適切な維持管理が必要である。
そこで,本稿では,コンクリートの劣化の進行度や内部欠陥を検査するための破壊・非破壊試験についての概要を紹介する。
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- ■異種金属接触腐食(No.50)
- 概要
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イオン化傾向の異なる金属が接触し,それに電解質溶液が存在するとイオン化傾向の大きい金属(卑な金属)が腐食される。これは,異種金属接触腐食あるいはガルバニック腐食と呼ばれている。
多くの環境で使用されている鋼材は,他の金属と同時に使用する機会は少なくない。例えば,鋼構造物の防錆処理として施される溶融亜鉛めっきとステンレスやアルミニウムの金物との接触がある。亜鉛めっき皮膜は大気中で表面に緻密な酸化皮膜を生成しているため,異種金属と接触しても電解液中ほど急速に溶解はしない。しかし,暴露される環境によっては接触部近傍の腐食速度が早くなる。特に酸性雨の多い地区や海塩粒子の飛来の多いところではこの傾向が強くなる。
本文では異種金属接触腐食の原理を述べるとともに,溶融亜鉛めっきと他の金属の接触の影響について述べる。