教本系・設計
 
■「鉄塔の構造設計者のための強度に関する教本」シリーズ(その2)(No.75)
概要

当社では,社内の鉄塔構造設計者が知っておくべき強度に関する知識として,根拠やものの考え方をできるだけ分かりやすく解説した「鉄塔の構造設計者のための強度に関する教本」を作成した。

この教本が広く,鉄塔に携わる人々の参考となればと思い,教本の抜粋をシリーズで紹介しており,本号では,前号(No.74)に掲載した「その1」の続編の「その2」として,主に断面性能計算,単純梁と片持ち梁の応力計算およびたわみ計算について解説する。

 
■「鉄塔の構造設計者のための強度に関する教本」シリーズ(その1)(No.74)
概要

当社では社内の鉄塔構造設計者が知っておくべき強度に関する知識について,根拠やものの考え方をできるだけ分かりやすく解説した「鉄塔の構造設計者のための強度に関する教本」を作成した。

この教本が広く,鉄塔に携わる人々の参考となればと思い,抜粋をシリーズで紹介することとし,本報では,まず(その1)として,主に鋼材とその強度に関する部分を解説する。

 
■鉄塔用ボルトの変遷について(No.73)
概要

近年,腐食による既設鉄塔の部材・ボルトの取替えや荷重条件の変更などに伴う既設鉄塔の強度検討が増えている。既設鉄塔の強度検討を行う際には,鉄塔を構成する使用鋼材・ボルトの規格を把握しておくことが大切である。しかし,送電用支持物に鉄塔が使用された1907年(明治40年)から現在に至るまで鋼材・ボルトの規格は度重なる制定・改定が行われてきた。ボルトの規格だけに着目しても,「ウイットねじからメートルねじへの変更」,「棒鋼の材料規格から製品規格への変更」,「送電鉄塔の大型化」,「ボルトの製造技術の進歩」などに伴い制定・改定が行われてきた。

そこで本稿では,主に送電鉄塔用ボルトの変遷について紹介し,併せて通信鉄塔用ボルトの種類,既設鉄塔改造時の留意点を紹介する。

 
■塔状鋼構造物に関する2つの基準類による強度の比較(No.73)
概要

塔状鋼構造物を大別すると,送電鉄塔と通信鉄塔に分類できる。これらのうち,送電鉄塔に関連する法令や基準には,「電気事業法」「電気設備に関する技術基準を定める省令」とそれに基づいた「電気設備の技術基準の解釈・解説」がある。一方で,通信鉄塔に関連する法令や基準には,「建築基準法」とそれに基づいた「建築基準法施行令」,「建築基準法等に基づく告示」および「鋼構造許容応力度設計規準」がある。

これらの基準類について,過去のデンロ技報No.02-4,03-5「塔状鋼構造物の各種設計基準の対比」で紹介したが,その後に改定された内容がある。前稿では,この改定内容も反映した現行基準のうち,荷重に着目した内容を紹介した。

本稿では,前稿に続いて強度に関する現行基準について整理する。

 
■電技および電技解釈改正の概要(No.72)
概要

2019年9月に関東地方に上陸した台風15号による被害を受け,経済産業省のもとに「令和元年台風15号における鉄塔および電柱の損壊事故調査検討ワーキンググループ」が設置され,調査や協議が行われた。これらの調査や学術的検討などの結果を踏まえて,2020年5月13日付けで電気設備に関する技術基準(以下,「電技」と呼ぶ)を定める省令と電気設備の技術基準の解釈(以下,「電技解釈」と呼ぶ)が一部改正され,その後,2020年8月12日付けで「電技解釈」が一部改正された。

過去にも台風による鉄塔損壊事故の発生が「電技」改正のきっかけとなり,改正を重ね,現在に至っているが,風荷重の考え方の変化により送電用鉄塔の設計手法にも影響を及ぼしてきた。 

本稿では,過去の「電技」および「電技解釈」における風荷重の変遷や,今回の「電技」および「電技解釈」改正に至る経緯を整理するとともに,今後の送電用鉄塔の設計風速の採用に関する留意点について概要を紹介する。

なお,鉄柱の内容についても同時に改正されたが,本稿での紹介は割愛する。

 
■塔状鋼構造物に関する2つの基準類による荷重の比較(No.72)
概要

塔状鋼構造物には,大きく分けて,電力会社の送電鉄塔・通信鉄塔と電力会社以外の通信鉄塔がある。

これらに関わる法令や基準として,前者は「電気事業法」「電気設備に関する技術基準を定める省令」とそれに基づいた「電気設備の技術基準の解釈・解説」があり,後者は「建築基準法」とそれに基づいた「建築基準法施行令」,「建築基準法等に基づく告示」および「鋼構造許容応力度設計規準」がある。

これらの基準類について,過去のデンロ技報No.02-4,03-5「塔状鋼構造物の各種設計基準の対比」で紹介したが,その後の改正や改定により内容が変更されている。

また,電力会社向けの送電鉄塔に対する電気学会規格JEC-127-1979送電用支持物標準は等価静的手法を採り入れ大幅な改正が行われようとしている。さらに,2019年の台風15号においては,特殊地形による風の増幅により鉄塔が倒壊したため,特殊地域の風荷重が見直されている。

そこで本報告では,法律に関する現行基準の荷重について整理する。

 
■鉄塔の現場スケッチについて(No.71)
概要

近年,既設鉄塔の高経年化に伴う部材の取替えや荷重条件の変更等に伴う既設鉄塔改造の依頼が増えている。また,自然災害等による鉄塔部材の損傷に対し,復旧のための仮設部材製作が緊急に必要になることもある。しかし,これらの部材の製作に必要な既設鉄塔の製作データがないために,既設鉄塔の現場スケッチ作業が必要となる場合が多い。

これらの現場スケッチ作業は高所作業が伴う上に,数ミリの測定誤差で改造用部材が取り付かないことがあるなど,安全や品質面では難易度の高い作業である。

その上,社会インフラとして電力の安定供給など重要な役割を担っている鉄塔の健全性を維持していくために,欠かせない作業である。

そこで本稿は,現場スケッチに関し,主として精度よく測定するための作業手順や留意点について紹介する。鉄塔の現場スケッチ作業の安全,品質,そして効率面の向上に資することができれば幸いである。

 
■トラス構造におけるクレモナ図解法について(No.70)
概要

トラス構造の節点に注目し,その節点に作用する力のつり合いから2次元の応力図を描くことで部材軸力を求める解法をクレモナ図解法と呼ぶ。この解法はトラス構造を採用する鉄塔で広く用いられてきた。

不同変位に対する応力解析や特殊構造の鉄塔設計には,3次元での力のつり合いだけでなく,変位のつり合いも考慮した立体解析が使用されることもあるが,通常の鉄塔設計には,今もクレモナ図解法による平面解析が一般的である。

そこで,本稿では新人の鉄塔設計者を対象として鉄塔の応力解法についての理解を深めるために,以下を紹介する。

  •  一般的なトラス構造の応力解法
  •  鉄塔塔体部のクレモナ図解法
  •  鉄塔腕金部のクレモナ図解法
 
■道路橋示方書の改定内容について(No.68)
概要

「橋・高架の道路等の技術基準」(道路橋示方書)は,技術的な知見や社会的な情勢の変化等を踏まえて,平成29年版において大幅な改定が行われた。

主な改訂内容は以下のとおりである。

  • 1)多様な構造や新材料に対応する設計手法の導入
  • 2)長寿命化を合理的に実現するための規定の充実

そこで,本稿では,主にこれらの改定内容について抜粋して紹介する。

 
■JIS C 8955:2017「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法」の改正内容について(No.65)
概要

JIS C 8955:2011「太陽電池アレイ用支持物設計標準」は2017年3月に「太陽電池アレイ用支持物の設計荷重算出方法」として内容が大幅に変更された。主な変更点を以下に示す。

  • (1)“許容応力度設計”のための設計用荷重算出方法であることが明記された
  • (2)風圧荷重に関し,地表面粗度の区分方法とアレイ面の風力係数が見直された
  • (3)積雪荷重に関し,勾配係数1.0が基本となった
  • (4)地震荷重に関し,設計用水平震度が見直された
  • (5)自由な材料選びを可能にするため,材料およびその許容応力度についての規定は削除された

以上のように,今回の改正では,かなり広範囲にわたって内容が変更されている。

そこで,本稿では,これらの改正内容を整理するとともに,改正に至った背景に関しても簡単に補足することとした。

 
■送電用鉄塔設計標準(JEC-TR-00007-2015)改正内容の紹介(No.63)
概要

2015年2月に制定された『送電用鉄塔設計標準(JEC-TR-00007-2015:以下 TRという)』の概要を紹介する。

TRは,『送電支持物設計標準(JEC-127-1979)』の改正(案)として制定されたものである。

今回制定されたTRの特徴は,国際規格ならびに建築・土木分野との整合,および最新の試験データなどを取り入れたことである。

今回の主な改正項目を以下に示す。

  • @ 限界状態設計法の導入
  • A 平成3年の台風19号による鉄塔損壊に鑑みて取りまとめられた『送電用鉄塔の風荷重指針・同解説(電力中央研究所,2006年2月)』の反映
  • B 地震荷重に対する設計方法の反映
  • C 送電用鉄塔基礎の多様化に伴う地盤調査,設計に関する最新知見の反映
  • D 過去の自然災害などにおける送電用鉄塔基礎の運用経験の反映

 
■建築物荷重指針(第5版)改定内容の紹介(No.62)
概要

2015年2月に第5版が刊行された『建築物荷重指針・同解説』の紹介を行います。

今回の改定の特徴は,現在の構造設計に合わせた改定,津波荷重と衝撃荷重という新しい荷重への対応,東日本大震災の被害からの教訓なども組み入れた改定が行われたことです。

主な改定項目としては,東日本大震災の教訓を踏まえて,

  • @建物性能にロバスト性を追加
  • A偶発荷重の考え方の導入
  • B津波荷重の章新設
  • C衝撃荷重の章新設
などがあります。

 
■太陽電池アレイ用支持物に作用する荷重の考え方について(No.57)
概要

近年,太陽光,太陽熱,水力,風力,バイオマス,地熱などの再生可能エネルギーに注目が集まってきているが,それらの中でも,特に太陽光発電はそのコストパフォーマンスの関係から,2012年度は予想以上に普及が進んだと言われている。

太陽光発電には太陽電池モジュール(太陽光発電パネル)が必要であり,更に,その太陽電池モジュールが複数組み合わさった太陽電池アレイを支えるための支持物(支持柱や架台など)も必要になる。また,この支持物は太陽電池アレイに作用する様々な荷重に対して安全でなければならない。しかし,かつては太陽電池アレイ用支持物の設計にそのまま適用できる規準がなく,建築基準法および同施行令,あるいは電気設備に関する技術基準などが準用されていた。そのため,2004年に一般社団法人日本規格協会が「太陽電池アレイ用支持物設計標準」をJIS C 8955として制定し,2011年にこれが改正されている。

そこで,本稿では,「JIS C 8955:2011 太陽電池アレイ用支持物設計標準」を参考に,この支持物の安全性を確認する上での荷重の考え方について紹介する。

 
■鉄塔用基礎のための地盤調査について(No.55)
概要

鉄塔を安全に建設して運用するには,健全な鉄塔と安定した基礎が必要である。安定した基礎を構築するためには良質な支持層に基礎を支持させる必要があるが,通常の状態では地盤内部の状況を確認することはできない。地盤の状況を確実に把握するためには,適切な地盤調査を行って,得られたデータを数値化して,耐力の算出や地盤状態を評価する必要がある。

平成23年に発生した東北地方太平洋沖地震では,地盤状況の評価が適切でないために地盤が液状化して傾いた住宅が発生する被害が多数生じた。そのような被害を生じさせないためにも,地盤に対する各種試験方法や特徴などを熟知して地盤の評価を行っていく必要がある。

また,事前調査を十分に行えば,各種資料から試験結果の妥当性を評価することも可能となる。

本稿では,主に,2009年に第二次改定がなされた日本建築学会の「建築基礎設計のための地盤調査計画指針」を参考に,鉄塔に用いる基礎の設計・施工のための地盤調査について紹介する。

 
■鉄塔の柱脚部の設計・施工について(No.51)
概要

1995年1月に発生した兵庫県南部地震では,建築物に多くの被害が生じた。当時の建設省がその原因調査を実施したところ,「新耐震法で設計されていない既存不適格建築物の存在」,「施工不良の建築物の存在」,「塑性変形能力の乏しい材料を使用した建築物の存在」等が明らかとなった。また,建築物の被害の中にはその土台となる柱脚部の損傷も見られた。

柱脚部は,上部構造物を基礎と固定し,上部からの応力を基礎に伝える非常に重要な部位であり,鉄塔においても同様である。

そこで,鉄塔における柱脚部に関し,その設計から施工までの流れについて,山形鋼鉄塔を例に紹介する。


■建築基準法等の改正について(No.46)
概要
 構造計算書偽造問題が発端となって「建築士(設計者)の職業倫理の欠如」,「建築士(設計者)の不適正な法の解釈」,「建築主事,指定確認検査機関の適正化の必要性」および「法の不明確な実態」が明らかになった。
 これらの課題に対応するため,建築基準法および建築士法が見直され,平成19年6月20日に施行された。
 そこで,その改正概要と鉄塔に関する構造関係規定について紹介する。



■鉄塔のたわみ計算(No.41)
概要
 構造物の設計を行うときは,主に「安全性」,「使用性」および「耐久性」の3つの要求性能について検討している。
 1)「安全性」の検討
 風や地震などの荷重やその構造物を使用しているときに生じる荷重が加わったときに,構造物が壊れたり,変形したりしないように使用部材を決定する。
 2)「使用性」の検討
 構造物の必要機能を失わないように使用部材や構造を決定する。ここで言う必要機能とは,例えば建物の場合,居住領域で人が歩いても床が揺れないことや,無線通信用鉄塔の場合では暴風時や地震時にアンテナ回線が途切れてしまわないことなどがあげられる。
 3)「耐久性」の検討
 構造物の耐用年数を上げるために防錆,防食の措置について検討を行う。

 これまで「安全性」の検討については既刊デンロ技報の教本シリーズで紹介している。また,「耐久性」に関するものとして,溶融亜鉛めっき処理に関する紹介も行っている。 しかし,「使用性」については,教本シリーズで簡単な紹介だけのため,本報で無線通信用鉄塔を例にして,「使用性」に関する検討のひとつであるたわみの検討について紹介する。



■設計教本 金属疲労の影響を取り入れた鋼管単柱の設計について(No.39)
概要
 鉄塔は自然環境下におかれているため,風や地震などのさまざまな力を受ける。
 一般に,強度設計を行う際には,これらの外力による個々の部材の最大応力を設計応力とし,材料強度と比較しながら部材の決定を行う。
 しかし,最大応力だけで部材が決定されるかといえば必ずしもそうではない。比較的小さな応力が繰返し作用する状況で部材が決定される場合がある。これは金属疲労による部材強度の低下があるためである。
 平成12年6月に建築基準法が改正され,その中で特に暴風時における風荷重は,地域やその地域の地表面の状況などに応じて細分化され,合理的に改正された。このため,旧建築基準法の風荷重よりも,地域によってはかなり小さな風荷重となるところもある。
 一般的に風荷重が支配荷重となる鉄塔においては,設計用風荷重が小さくなることに伴い部材サイズが小さくなり,かつ鉄塔全体の剛性も小さくなる。その結果,今まで問題にならなかった低風速領域における風荷重が,長時間頻繁に作用する場合において,揺れや金属疲労の問題が顕在化する可能性があり,設計の段階からこれらの問題に対して配慮しておく必要がある。
 そこで,最初に金属疲労の概論を述べ,疲労強度の評価方法についての解説や,疲労に対する設計上の留意点について述べる。



■設計教本 改正建築基準法解説「風荷重」について(No.34)
概要
 昭和25年に制定された建築基準法が50年ぶりに抜本的に大改正され,「建築基準法の一部を改正する 法律」が平成10年6月12日に公布された。これに伴い,改正内容の技術的細目を定める建設省(現国土 交通省)告示が,平成12年6月1日から施行され,約1年半が経過した。
 改正当初は,移行期間の扱いとして旧基準でも確認申請手続きは受理されていたが,現在ではほとん ど受理されなくなり,構造設計のほとんどが改正後の建築基準法に準拠して設計されるようになった。
 構造設計を行う上で基本になるのが「荷重」と「強度」である。今回の改正では基準強度については 大きな変更はなかったが,風,地震,積雪などの荷重に関しては大幅に変更となっている。
 本誌「鉄塔工学」が対象としている通信用鉄塔や送電鉄塔は,その要求性能や構造から,風荷重が支 配荷重となることが多い。
 そこで,この改正建築基準法で見直された風荷重についての理解を深めるため,風荷重の基本的な概 念や旧建築基準法と改正建築基準法の比較などについて簡単に説明する。



■設計教本(その4)『JECに基づき設計される鉄塔の接合部の強度』(No.31)
概要
 送電用鉄塔を対象とした設計教本として、当技報のNo.28で「荷重」、No.29で「応用解析」、No.30で「部 材強度」について連載してきた。
 今回は、工場で製作された各部材を一体の構造物に組み立てるために必要な「接合部」について述べる。
 部材の接合には様々な方法があり、またその接合方法で部材強度が変わるため、本報では接合部の強 度と合わせ、接合方法と部材強度の関係についても整理する。



■トラス構造物の終局耐力評価の一手法(No.31)
概要
 兵庫県南部地震、台湾集集地震による多くの建築物の損傷、あるいは近年の台風による鉄塔倒壊など、 設計時に想定した以上の荷重が作用して破壊に至る例が見られた。事後の詳細な調査・検討結果から、 設計荷重を越えた後、破壊に至るまでの構造物の挙動が明らかにされてきたが、構造問題における種々 の非線形解析は、汎用解析コードが利用できる今日においても、専門性を要する技術で容易ではない。 より簡易な手法で破壊前後の挙動、および真の耐荷力が予測できれば、防災上、極めて有益である。
 そこで、本論文では、限界状態設計を念頭に置き、従来、有限要素法で増分法により解いている非線 形解析に対して、解析実施者から見て、より簡便な非線形解析の一手法を提案する。提案手法の概要は、 部材レベルの荷重−変位関係を適切な有理式で表し、重ね合わせで得られた全体系の荷重−変位関係式 の逆関数により解を得るものである。逆関数はテイラー展開の形で表すものとし、高階の微係数はすべ て数式処理システムの活用を前提としている。



■設計教本(その3)『JECに基づき設計される鉄塔の部材強度』(No.30)
概要
 送電用鉄塔を対象とした設計教本として、当技報No.28では「荷重」について、No.29では「応力解析」 について連載してきた。
 今回は、応力解析により得られた部材の発生応力から、使用部材を決定するために必要な「部材強度」 について述べる。
 最近、建築や土木の分野において、設計思想が性能指向型設計や限界状態設計へ移行しつつある。ま た、送電用鉄塔の設計標準である「JEC−127−1979」についても改訂に向けた動きがある。
 そのような中で今一度、鉄塔建設に使用している許容応力度設計法を理解した上で新たな設 計思想の導入に備える必要があると考える。
 そこで、本報では「JEC-127-1979」に基づいて設計される鉄塔の部材強度について整理する。



■設計教本(その2)『塔状鋼構造物における応力解法の考え方』(No.29)
概要
 前号では、JEC−127−1979に基づく送電用鉄塔の設計荷重について、その考え方を紹介した。
 通常の送電用鉄塔の応力解析では、設計荷重は静的荷重として扱い、また、鉄塔は平面トラスにモデ ル化して、クレモナ図式解法で応力算出を行っている。
 近年では、鉄塔規模の大型化、社会基盤整備における信頼性向上への要求、あるいは景観への配慮な どによる鉄塔形態の多様化が見られる。さらには、近い将来、性能指向型設計への移行が考えられる。 そのため、鉄塔の応力解析は従来のクレモナ図式解法による平面解析だけでは対応できなくなってきて いる。
 そこで、本報では送電用鉄塔を含む塔状鋼構造物について、様々な荷重やモデル化に対応した応力解 法の概要を紹介する。



■設計教本(その1)『JEC-127-1979の荷重の考え方』(No.28)
概要
 構造物に作用する荷重には、自重や積載重量などの時間的変化のない静的荷車と、風圧力、地震波な ど時間的変化をともなう動的荷重がある。設計時に構造物の部材決定要因となる支配荷重の多くは動的 荷重である。しかし、動的荷重を取り扱った応力計算は技術的に難しく、計算時問もかかるため敬遠さ れがちである。このため、我が国で構造物を設計する場合には、動的荷重を静的荷重に置き換えた静的 設計を行うことが多い。
 また、我が国は技術レベルの高い情報収集能力と分析能力を有していることもあり、これらを駆使し て推奨された静的な設計荷重に高い信頼が寄せられることも静的荷重による設計が主流になる理由のひ とつといえる。
 送電用鉄塔の設計指針である送電用支持物設計標準JEC−127−1979(以下JECと呼称する)には、静的 に取り扱われた想定荷重が記載されている。これらの想定荷重は、設計を簡便にする反面、設計者の荷 重に対する知識の貧弱さをも容易に補うため、想定荷重の決定に至る過程に関心のない設計者は少なく ないと考えられる。
 本報では、『JECの荷重の考え方』に今一度目を向け、設計荷重の考え方をまとめてみたいと思う。



■有限要素法による構造物の静的解析について(No.27)
概要
 最近の鉄塔設計では計算機の高性能化とソフト面の充実から有限要素法を利用する機会が増えてお り、有限要素法の知識がなくても計算に必要な入力データを容易に作成できる環境が整いつつあります。
 しかし、設計者は自ら設計する構造物に対して、工学的見地から物理的判断を下さねばなりません。 有限要素法を道具として用いる以上、設計者が有限要素法を理解することは工学的見地に立つための必 要条件だと思います。
 鉄塔の設計では、自然界における風や地震という動的荷重を静的荷重に置換した静的解析が一般的で す。本報では、有限要素法を用いた構造物の静的解祈手法を紹介します。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第19回『鉄塔の基礎設計その4』(No.25)
概要
 前号でも紹介した通り、今回は「鉄塔の基礎設計 その4」として深礎基礎について設計例を示し、そ の解説を行う。
 深礎基礎は深礎杭により荷重を支持層に直接伝達する構造で、杭先端と杭側面の支持力により抵抗する ものであり、地表面の軟弱層が厚く杭が必要となる山岳地や用地・環境上の制約から、既製杭や場所打ち 杭の施工が出来ない場合に使われることが多い。
 従って、地盤の支持力の評価および現場の状況に応じた施工方法の検討などが基礎設計上、重要な要素 となる。
 本稿で市街地の斜面上に建設する鋼管単柱用の深礎基礎について設計例に解説を加えて紹介する。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第18回『鉄塔の基礎設計その3』(No.24)
概要
 前号でも紹介した通り、今回は「鉄塔の基礎設計 その3」として、杭基礎について設計例を示し、そ の解説を行う。
 杭基礎は、杭により荷重を支持層に直接伝達する構造で、杭先端の支持力と杭周摩擦力により抵抗して 支持するものであり、床板直下の地盤が軟弱で支持力が得られない場合に使われることが多い。
 従って、支持地盤の選定や地盤の支持力の評価および現場の状況に応じた施工方法の検討などが基礎設 計上、重要な要素となる。
 本稿では、PHC杭を使用した逆T字型つなぎ梁基礎と、場所打ち杭を使用したマット基礎について、 設計例に解説を加えて紹介する。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第17回『鉄塔の基礎設計その2』(No.23)
概要
 前号でも紹介した通り、今回は「鉄塔の基礎設計 その2」として、直接基礎について設計例を示し、 その解説を行う
 直接基礎は、上部からの圧縮力に対しては基礎底面の地盤の支持力によって抵抗し、また、引揚力に対 しては基礎自身の自重と上載土の重量によって抵抗する。
 従って、支持地盤の選定や地盤の支持力の評価および地下水位の把握などが基礎設計上、重要な要素と なる。
 本稿では、直接基礎として逆T字型独立基礎と逆T字型つなぎ梁基礎およびマット基礎についての設計 例を解説を加えながら記載する。
 なお、今回掲載できなかった杭基礎や深礎基礎については、次号で紹介する予定である。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第16回『鉄塔の基礎設計その1』(No.22)
概要
 地上に建設される構造物を大地に安定させるためには、必ず基礎が必要となるが、基礎はそのほとんど が地中にあり、目立たない「縁の下の力持ち」にたとえることができる。
 この「縁の下の力持ち」が期待される耐力を保持していなければ、上部構造物がいくら堅固であっても、 基礎から崩壊してしまうことになるため、基礎は目立たないが非常に重要な構築物である。
 そこで、今回は初級教本シリーズの第16回として、鉄塔の基礎設計について触れ、良好な基礎を構築す るために必要な地質調査、基礎形式の選定、および地盤の支持力の評価方法などについて述べる。
 なお、次号では、代表的な基礎形状に関する設計例とその解説を記載する予定である。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第15回『送電用中空鋼管鉄塔の詳細設計』(No.16)
概要
 デンロ技報第1号で紹介したように塔状鋼造物について、基本設計から現寸までの各工程に必要な基本 知識を「初級教本シリーズ」として連載している。
 デンロ技報第13号から第15号までは、送電用山形鋼鉄塔の詳細設計について述べてきたが、第16号では 送電用中空鋼管鉄塔の作図について述べる。なお、送電用中空鋼管鉄塔も基本的な作図手順、図面の仕上 げについては送電用山形鋼鉄塔と同じなので合わせて読み進めて欲しい。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第14回『送電用山形鋼鉄塔の詳細設計その3』(No.15)
概要
 デンロ技報第1号で紹介したように塔状鋼造物について、基本設計から現寸までの各工程に必要な基本 知識を、「初級教本シリ一ズ」として連載している。
 送電用山形鋼鉄塔の詳細設計は、通常日本鉄塔協会編送電用山形鋼鉄塔製作基準に基づいて行なうが、 詳細設計の経験の浅い者には意味の解りにくい部分もある。そこで、「送電用山形鋼鉄塔の詳細設計その 3」では、簡易な展開図を使用した裏打ち面や、腕金部の作図から図面の仕上げまでを述べるので、送 電用山形鋼鉄塔製作基準と共に読み進めて欲しい。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第13回『送電用山形鋼鉄塔の詳細設計その2』(No.14)
概要
 デンロ技報第1号で紹介したように塔状鋼造物について、基本設計から現寸までの各工程に必要な基本 知識を、「初級教本シリーズ」として連載している。
 送電用山形鋼鉄塔の詳細設計は、通常日本鉄塔協会編送電用山形鋼鉄塔製作基準に基づいて行なうが、 詳細設計の経験の浅い者には意味の解りにくい部分もある。そこで、「送電用山形鋼鉄塔の詳細設計その 2」では、実際の作図手順に沿って各段階での注意点と作図例を示す。今回は、作図前の準備から控ボル トの決め方迄を述べるが、送電用山形鋼鉄塔製作基準と共に読み進めて欲しい。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第12回『送電用山形鋼鉄塔の詳細設計その1』(No.13)
概要
 デンロ技報第1号で紹介したように塔状鋼構造物について、基本設計から現寸までの各工程に必要な基 本知識を、「初級教本シリーズ」として連載している。
 本シリーズ第12回として
  (1)顧客へ届ける『御承認願い図』の基本的な事項のチェックを可能にする。
  (2)詳細設計に携わる経験年数の浅い者に、構造詳細図作成に必要な基本知識を修得させる。
という目的で、「構造詳細図の作成方法」について今後述べていく。
 構造詳細図(以下詳細図という。)は、設計された骨組図(スケルトン図)をもとに、構造物各部の寸 法・材料・部材の取付状態・ボルト径・本数・長さ・配列等を明示した図面をいい、
  (1)顧客に製作承認を申請するための承認申請図
  (2)現寸作業を行うための現寸図
  (3)部材製作のための製作図
  (4)組立に必要なボルトを集計する
    ためのボルト拾い図
  (5)部材検査に使用する検査用図面
  (6)現地での組立に使用する組立図
と、1枚の図面が多岐に亘り使用されており、構造物を製作する場合、基本となるものである。
 今回から、66〜77KV級の送電用山形鋼鉄塔の詳細課計に関する専門用語の説明・作図の手順と注意点・CADを含めた将来の展望について述べる。なお、今後は次の各鉄塔について、連載していく予定である。
(1)送電用山形鋼鉄塔
(2)送電用鋼管鉄塔
(3)無線用山形鋼鉄塔
(4)無線用鋼管鉄塔



■鋼構造物に関する初級教本シリーズ第11回『屋外鉄構の設計その2』(No.12)
概要
 デンロ技報第1号で紹介した通り、塔状鋼構造物について、基本設計から現寸までの各作業に必要な項目 も「初級教本シリーズ」として連載している。
 今回は、シリーズの第11「屋外鉄構の設計 その2」として、設計例を基に屋外鉄構の設計について 具体的な方法を述べる。



■鋼構造物に関する初級教本シリーズ第10回『屋外鉄構の設計その1』(No.11)
 概要
 デンロ技報第1号で紹介した通り、塔状鋼構造物について、基本設計から現寸までの各作業に必要な項目を、「初級教本シリーズ」として連載している。
 今回は、初級教本シリーズの第10回として”屋外鉄構の設計”について述べる。
 屋外鉄構は、発変電所や開閉所内の主母線、送電線および変圧器への分岐線を支持するための鋼構造物で、「電気設備に関する技術基準」により設計されている。
 ここでは、屋外鉄構の概要と設計の基本的な考え方について述べる。
 なお次号では、設計例を基に屋外鉄構設計の具体的な方法について述べる予定である。



■鋼構造物に関する初級教本シリーズ第9回『発変電所用機器架台の設計』(No.10)
概要
 デンロ技報第1号で紹介した通り、塔状構造物について、基本設計から現寸までの各作業に必要な項目 を、「初級教本シリーズ」として連載している。

 今回は、シリーズの第9回として”架台の設計”について述べる。
 架台の設計は「電気設備に関する技術基準」による場合と「建築基準法」による場合の2様があるが、ここでは「電気設備に関する技術基準」により設計する発変電所用機器架台の設計方法について述べる。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第8回『無線用鉄塔の設計その4』(No.9)
概要
 前回まで塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズとして、無線用鉄塔の設計について主に理論的側面あ るいは設計の考え方を中心に述べてきた。
 今回は、これまで述べてきた内容を踏まえながら、設計例を基に鉄塔設計の具体的方法について述べる。
 なお、実際の鉄塔設計においては、最近では電算機を利用する事が多いが、ここでは、トラス鉄塔の応 力に関する基本事項を理解しやすく、また計算結果のチェック等に有効である図式解法(クレモナ法)に よる設計例を採り上げることとした。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第7回『無線用鉄塔の設計その3』(No.8)
 デンロ技報第1号より、塔状鋼構造物の基本設計から現寸までの各作業に必要な項目を、「初級教本」 として連載してきた。
 今回は、初級教本シリーズ・第7回・「無線用鉄塔の設計 その3」として、応力算定・部材および ボルトの算定・付帯設備の設計・変形量の算定について述べる。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第6回『無線用鉄塔の設計その2』(No.7)
概要
 デンロ技報第1号から、塔状鋼構造物の基本設計から現寸までの各作業に必要な項目を、「初級教本」 として連載してきた。
 今回は、初級教本シリーズの第6回として、前号に引き続き「無線用鉄塔の設計」について述べる。 今回の特徴は無線用鉄塔の設計荷重として重要な「風荷重」について、鉄塔の建設にたずさわる方々は もちろん、その他の方々にも理解いただけるように、風に関する基礎知識を盛り込んで出来るだけ判り 易く解説した点にある。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第5回『無線用鉄塔の設計その1』(No.6)
概要
 デンロ技報第1号で紹介した通り、塔状鋼構造物について、基本設計から現寸までの各作業に必要な 項目を、「初級教本」として連載している。
 今回は、初級教本シリーズの第5回として、”無線用鉄塔の設計”について述べる。
 無線用鉄塔とは、無線通信用および電波放送用のアンテナを搭載する為の鉄塔で、”建築基準法”と ”電気設備に関する技術基準”により設計されている。
 ここでは、”建築基準法”と”電気設備に関する技術基準”のうち”建築基準法”により設計する無 線用鉄塔の概要と、無線用鉄塔を設計する為の各種荷重について述べる。
 なお次号では、装柱決定から部材算定までの具体的な設計方法を述べる予定である。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ第4回『送電用鉄塔の設計その3特殊設計』(No.5)
概要
 前報に引続き、”塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ”のうちの”送電用鉄塔の設計”について 述べる。なお、本報では送電用鉄塔の安全性を向上させるため、各送電用鉄塔ごとに個別に定められて いる特殊な設計方法の例として、「片継脚の設計」、「不平均張力に対する腕金突出部の設計」、「狭 根開き鉄塔の設計」、「耐震設計」、及び「その他の特殊な設計方法」の紹介を行う。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ 第3回『送電用鉄塔の設計その2』(No.4)
概要
 デンロ技報第1号で紹介した通り、塔状鋼構造物について、基本設計から原寸作業までの各作業 に必要な項目を、「初級教本」として連載します。
 今回は、初級教本シリーズの第3回目として、前回に引き続き送電用鉄塔の設計について述べま す。
 送電用鉄塔とは、各電力会社殿で架空送電線を支持する為に設ける鉄塔で、”電気設備の技術基 準”に基づいて設計されています。実務上は、電気学会より発行されている「送電用鉄塔設計標準 1965年度版」(以下現行JECと記します。)と、必要に応じて、現行JECの考え方を見直した 「送電用支持物設計標準」1979年度版」(以下新JECと記します。)にもとづいて設計を行って います。
 ここでは、前回に引き続いて、送電用鉄塔の各部に生じる応力の計算と部材決定および計算例に ついて、述べます。



■上空風圧の逓増と架渉線の横振れを考慮した風圧荷重の算定方法(その2 支持点に高低差がある場合)(No.4)
まえがき
 上空風速の逓増と架渉線の横振れを考慮した風圧荷重の算定法について、前回は架渉線の支持点が水平の場合 について解析したが、実際の送電線路では、殆んどの場合、支持点に或る程度の高低差のあるのが通常である。
 架渉線の風圧荷重の算定においては、支持点に多少の高低差があっても、両支持点間の平均的高さを採って算 定すれば、さほど問題は生じないと思われる。しかしながら、大型河川横断箇所や海峡横断、他線路交叉箇所の 側径問箇所等で見られるように、著しく高低差がある場合には、十分吟味し、合理的な方法によって、算定 することが安全性、経済性の観点から好ましいと思われるので、前回に引き続き以下述べることとした。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ 第2回『送電用鉄塔の設計』(No.3)
概要
 デンロ技報第一号で紹介した通り、塔状鋼構造物について、基本設計から現寸作業までの各作業に必 要な項目を、「初級教本」として連載します。
 今回は、初級教本シリーズの第2回目として、送電用鉄塔の設計について述べます。
 送電用鉄塔とは、各電力会社殿で架空送電線を支持する為に設ける鉄塔で、”電気設備の技術基準” に基づいて設計されています。実務上は、電気学会より発行されている「送電用鉄塔設計標準1965年度 版」(以下現行JECと記します。)と、必要に応じて、現行JECの考え方を見直した「送電用支持 物設計標準1979年度版」(以下新JECと記します。)にもとづいて設計を行っています。
 ここでは、送電用鉄塔の概要と、現行JEC、新JECの両基準を用いた送電用鉄塔の設計について 述べます。



■塔状鋼構造物の各種設計基準の対比(No.3)
はじめに
 前号では塔状鋼構造物の設計にあたって「電気設備に関する技術基準」による場合、「建築基準法」による場 合および橋梁の設計基準として「道路橋示方書」をとりあげて、荷重および使用鋼材の比較を行った。
 今回は建築基準法に関する基準類として「鋼構造設計規準」、電気設備に関する技術基準に関する基準類として「送電用鉄塔設計標準(JEC−127−1965)」(以下「JEC127」と呼ぶ)、「送電用支持物設計標準(JEC−127−1979)」(以下「新JEC124」と呼ぶ)および橋梁の設計基準として「道路橋示方書」(以下「道示」と呼ぶ)をとりあげて、許容応力度および各種制限事項の比較を行う。



■上空風速の逓増と架渉線の横振れを考慮した風圧荷重の算定方法(その1 支持点水平の場合)(No.3)
まえがき
 現行送電用鉄塔設計標準(JEC−127)ならびに新JEC−127では、上空風速の逓増に対する鉄塔風圧荷重 の採り方について、塔高に関連する等価風圧値で明確に表示されている。他方架渉線の風圧荷重に対しては、設 計の簡素化を図る意図から現行JEC−127では上空風速の逓増と構造規摸(径間長)による逓減効果の双方を 配慮し通常の高さ(塔高約80m)以下では架渉線風圧を一定に採ることとし、塔高がこれ以上いちじるしく高くな る場合、適宜風圧値を増加することとなっている。
 また、新JECでは、その支持物の地表面を基準とし、架渉線の高さは強風による横振れを考慮した平均位置を 用い、規模効果による風圧逓減も同時に考慮し算定することとなっている。
 近年、送電用鉄塔は、大容量化、多回線化ならびに地域環境対策上の最下電線地上高の増大などから、ますま す大型化され、電線の位置も高く、架渉線に関係する諸荷重の占める割合も次第に増加している。
 このような現状において、実際に設計を行う場合、架渉線の風圧荷重算定に対して具体的にどのような根拠で 高さを決定し、算出するか、また新JEC対応における横振れを考慮した平均的高さについてもある程度合理的 に明確化する必要があると思われる。
 しかしながら、架渉線の横振れ状態まで考慮した実効的風圧荷重の算定は、平地における河川横断箇所のよう に支持点が水平に近い場合においても、架渉線はcatenaryを呈しており、架渉線の横振れの度合いも、基準風速 値、上空逓増率、径間長と規模効果による逓減率、さらに架渉線の線種などによっても変化し、その計算は相当 煩雑なものとなる。一般に標準径間長以下の場合の弛度は比較的小さいことから、架渉線の支持点高をそのまま 架渉線の地上高としても安全側となり、経済的効果を期待し得ないが、径間長が長くなるにつれて架渉線の弛度 は著しく増大し、架渉線の支持点高と構振れを考慮した実効的、等価地上高との差が著しく大きくなる傾向があ る。
 以下本文では、架渉線の横振れを考慮した架渉線風圧荷重の算定手法について解析し、実効的風圧荷重の実態 とその主要因について分析し、実際の設計に必要な等価的架渉線地上高を定めるための一助として報告したい。 なお、今回は支持点高が水平の場合について述べ、次回に、高低差のある場合および各種の要因別分析と、具体 的設計面への資料としての集約化を図ったものを報告したい。



■塔状鋼構造物の終局耐力の評価方法および地震時における応答性状に関する研究計画(No.3)
概要
 近年の電力需要や通信量の増大にともない、送電線やアンテナ類を支持する塔状鋼構造物の規模が以前に比べ、 数倍に大型化している。このような塔状鋼構造物の大型化にともない、万が一にも倒壊事故が起こった場合、社 会に与える影響は甚大なものとなる。
 一方、低成長時代を迎えた今日、これらの塔状鋼構造物の設計には、より一層の”コスト・ミニマム”の思想 が反映されなければならない。
 このような時代の要求に応えるために現在、送電用あるいは通信用の塔状鋼構造物の設計方法が見直されてい る。
 しかし、何十年に一度の大規模な地震や、異常気象による短期間での着雪現象や着雪の脱落現象等を設計に反 影した場合、現在の塔状鋼構造物の設計法では、構造物が、さらに、数倍の規模に大型化する可能性がある。
 これらの問題点を解決するために、より合理的な塔状鋼構造物の設計法の検討を、実験と解析を通じて今後数 年間をかけて行う予定である。
 今回は、主に塔状鋼構造物の終局耐力を向上させることにより、大規模な地震や異常気象のために構造物が 倒壊しても、写真2に示すような崩壊性状に収まるような設計法を採ることにより、地域周辺に及ぼす影響を最 小限にとどめる方法の検討を行う。
 写真1では倒壊した塔状鋼構造物が地表面と接触している。このような崩壊性状を示した場合、他の建築物や 人畜に被害を与える可能性が高いと考えられる。
 写真2では、構造物は倒壊までにはいたらず、単一部材の破損にとどまっている。このような崩壊性状を示す 場合、被害を最小限にくいとめることができると考えられる。
 この他、現在、塔状鋼構造物の明確な耐震設計規準がないため、現在は建築基準法に定められた耐震設計法に 準じた方法が多くの場合採用されている。
 建築基準法では建築物の地上高さにより分類を行い、それぞれの規模に応じた耐震設計を行なうことが定めら れている。
 しかし、塔状鋼構造物の場合、それらの分類のどの範疇に該当するのか不明確であり、地震に対する応答性状 も建築物とは大きく異なると考えられる。

 以上より、今回は数種の実験的研究を通じて、地震時の搭状鋼構造物の応答性状を明らかにし、さらに合理的 な設計法に関する検討を行う。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズ 第1回『材料に関する基礎知識』(No.2)
概要
 デンロ技報第1号で紹介した通り、塔状鋼構造物の建設にたずさわっておられる方々の参考にしてい ただけるよう基本設計から原寸作業までの各作業に必要な基本的な知識を「初級教本」として連載して 行く予定です。
 今回は初級教本シリーズの第1回目として、塔状鋼構造物の設計に必要な材料に関する基礎知識につ いて述べます。
 なお、現在、塔状鋼構造物の設計基準としてつかわれている”電気設備に関する技術基準”と”建築 基準法”による使用材料の違いについては、別稿の「塔状鋼構造物の各種設計基準の比較」に記載いた しましたので御参照下さい。



■塔状鋼構造物の各種設計基準の対比(No.2)
はじめに
 塔状鋼構造物の設計にあたっては、送電用鉄塔のように「電気設備に関する技術基準」による場合と 電力会社以外の無線通信用鉄塔のように「建築基準法」による場合とがある。これらの基準類の比較を することは、各基準に対する理解を深めるのに役立つと思われる。
 本報告では建築基準法に関する基準類として「建築基準法・同施工令」及び「建築物荷重指針」、電 気設備に関する技術基準に関する基準類として「送電用鉄塔設計標準(JEC−127−1965)」、「送 電用支持物設計標準(JEC−127−1979)」、「電力用無線通信鉄塔・鉄柱設計標準(JEC−144− 1966)」及び「電力用無線通信アンテナ支持物設計標準(JEC−144−1980)」をとりあげて比較す る。さらに橋梁の設計基準として「道路橋示方書」をとりあげて他の基準との比較を示したい。



■塔状鋼構造物に関する初級教本シリーズについて(No.1)
はじめに
 電力需要の増大、ニューメディアの発達にともない、現在使用されている塔状鋼構造物の種類は、送 電用鉄塔や、アンテナ類の支持物として使われている無線鉄塔、等多種多様に亘っています。
 このような塔状鋼構造物(以下”鉄塔”と記します。)は次に示すように様々な工程を経て建設され ます。