構造解析
 
■日照による鋼管単柱鉄塔のたわみ測定事例の紹介(No.74)
概要

多くの物体は,加熱されると膨張し,冷却されると収縮する。鉄塔に使用される鋼材も例外ではなく,温度変化でわずかに伸縮する。このように,温度変化で生じたひずみを熱ひずみという。

鋼管単柱鉄塔の場合,日当たりの違いによる鋼材表面の温度差が大きい時には,目視でそれとなく認識できるほどに熱ひずみによるたわみが生じることがある。

本稿では,このような事象に関して,鋼管単柱鉄塔での日照による鉄塔頂部のたわみ測定事例を紹介する。また,山形鋼鉄塔での日照による熱ひずみ測定事例についても合わせて紹介する。

更に,鋼管表面の温度差が既知である場合での日照による鋼管単柱鉄塔のたわみの簡易推定方法を検討したので,この結果についても合わせて紹介する。

 
■最下節主柱材に「重ねアングル補強」を施した鉄塔の紹介(No.65)
概要

送電鉄塔では,経済的に有利な山形鋼鉄塔が多く用いられるが,主柱材が山形鋼の最大サイズ(HL250×35(SS540))を超える場合,一般的には鋼管鉄塔が用いられる。しかし,鋼管鉄塔に設計変更した場合,山形鋼鉄塔に比べて材料手配を含む製作時のリードタイムを多く要するので,経済性だけでなく工期面で不利となることが多い。

そこで,最下節主柱材に「重ねアングル補強」を適用し,山形鋼鉄塔の適用拡大を図る方法を検討した。その「重ねアングル補強」とは,単一山形鋼からなる主柱材の内側に,さらに山形鋼の補強材を沿わせた補強方法である。

平成27年度に,この「重ねアングル補強」による補強効果を各種実証試験および有限要素解析で確認した。そして,平成28年度に,実際に「重ねアングル補強」を採用した鉄塔の建設が完了した。

本稿では,この「重ねアングル補強」を施した鉄塔の概要について紹介する。

 
■非線形解析について(No.54)
概要

一般に,鉄塔設計における構造解析は,線形解析で行われている。現在,構造解析手法には,鉄塔の構面を平面トラスにモデル化して解く平面解析と,鉄塔の構成材を要素で表し,その要素をつないだ3次元のモデルを有限要素法により解析を行う立体解析の2種類が多く採用されている。

しかし,近年,より現実に近い状態を模擬した鉄塔設計が要求されるようになってきており,従来の線形解析では対応できないケースがある。そのため,材料の非線形性や有限な変位を考慮した非線形解析が採用される事例が増えてきつつある。

そこで,本稿では,非線形解析の概要やその応用例について紹介する。

 
■放送用鉄塔のデジタル化対応構造解析システム「TV−STANS」の紹介(No.36)
概要

地上波テレビのデジタル放送が,今年2003年12月から関東・中京・近畿の3大広域圏で,2006年からその他の地域で開始され,2011年には全国の地上波アナログ放送が終了する予定となっています。

このデジタル放送化に向けての既設放送用鉄塔の強度検討や新設鉄塔に役立つべく,放送用鉄塔の構造解析が迅速に行えるシステム「TV−STANS」を開発しましたので紹介致します。

この「TV−STANS」は,改正建築基準法(平成12年6月)および,地上デジタル放送用送信設備共通仕様書(2002年5月10日)に対応したソフトで,静的平面解析,静的立体解析,動的立体解析の3段階で構造解析を行うことができます。出力は,全て日本語出力で解かりやすい出力になっています。また,このシステムの電子データから詳細図〜現寸図〜工場加工データ作成までの一貫処理を行い,品質のよい製品をより安く,より早く提供できるシステムも構築しております。

さらに,CGによる放送用鉄塔の景観シミュレーションも行います。

地上波テレビ放送用鉄塔の計画,設計,検討の際には,弊社へお気軽にご用命下さい。


■半剛接合部を考慮した送電用鉄塔の複合非線形解析(No.36)
概要
 送電用鉄塔のようなトラス構造の主応力材には,主に引張応力と圧縮応力が生じるが,トラス構造の 耐力は,主応力材の座屈強度によって決まる場合が多い。このような座屈現象は,一般的には圧縮応力 が作用したときの釣り合い状態に材料の降伏現象が加わった不安定現象によって生ずる。従って,送電 用鉄塔の不安定現象による崩壊挙動を解析的に把握するため,材料の非線形性と有限な変位を考慮した 複合非線形解析が必要である。
 また,送電用鉄塔では,溶融亜鉛めっきが施されたボルト接合が使われており,その接合部の剛性が 構成材の応力変形挙動に与える影響について,日本鉄塔協会技術委員会では,接合部における鋼板の支 圧変形およびボルトのせん断変形の影響により,接合部の剛性が母材の剛性よりも低下したことを報告 している。また,高力ボルト摩擦接合概説では,接合部の耐力は母材の降伏応力の0.1〜0.15倍程度にな ることを報告している。
 本論文では,鉄塔の一部を想定した1パネルおよび2パネル平面骨組モデル,また実大鉄塔を想定し た平面骨組構造を対象に,部材接合部をすべて剛とした剛接モデルと,鉄塔斜材部の接合部の剛性を半 剛とした半剛接モデルを汎用プログラムCOSMOS/Mを用いて静的複合非線形解析を行うことによ り,半剛接合部が鉄塔の最大耐力や崩壊挙動に及ぼす影響を考察した。



■局部座屈を考慮した送電用鉄塔全体モデルの弾塑性解析(No.33)
まえがき
 平成12年6月1日から施行された建築基準法では「性能規定」が導入された。性能規定とは,構造物の要 求性能を規定し,一定の性能さえ満たせば使用する材料や解析方法に制限を設けないというものである。
 送電用鉄塔の設計にはクレモナ解法を用いた許容応力度設計法が長年用いられてきたが,近年のコス トダウンの要求や,大型化する構造物の設計手法の妥当性を問う観点からも,近い将来『性能規定』を 用いた設計に移行することも予想される。
 性能規定へ移行すると,設計荷重まで壊れないことを前提としてきた設計から,構造物ごとの最大荷 重と破損箇所を設計段階で把握してコストパフォーマンスや要求性能を選択する設計になることも考え られる。
 そこで,構造物の最大耐力とその時の変位量を簡単に求める方法として,弾塑性解析(簡易法)を提 案し,デンロ技報No.28でその精度を報告した。本報では,簡易法を鉄塔全体モデルに適用したので, その精度を報告する。



■変動風速のシミュレーション結果を用いた鉄塔−架渉線連成系の時刻歴応答解析に関する研究(No.32)
概要
 送電用鉄塔の設計は送電用支持物設計標準に基づいて行われている。現行設計手法では送電用鉄塔の支 配荷重である風荷重を静的にとらえ、鉄塔各部材の強度を決定している。しかしながら現行設計手法には 以下のような問題点がある。
1 )実際の風は空間的・時間的に変動し、鉄塔の部材応力や架渉線張力は時々刻々変化し、かつ鉄塔と架 渉線の連成作用により複雑な応答を示す。
2 )架渉線の挙動は幾何学的非線形性を示すが、現状設計手法では考慮していない。
 このため、設計は十分な安全率を考慮した許容応力度設計法が用いられ、安全側の評価がされている。 また、近年、現行設計法の問題点を解決し、送電用鉄塔の動的応答挙動を明らかにして最適な設計を行う ために、鉄塔−架渉線連成系モデルを用いた時刻歴応答解祈の報告が増加している。しかしながら、時刻 歴応答解析では、以下のような問題点がある。
1 )変動風速が空間的な変動の相関を持ち、それらの相関を満たすように空間内にある任意点の変動風速 (風荷重)を作成することが難しい。
2 )変動風速は統計的な性質を取り込んだ形でしか再現できず、現地の地形因子の性状を取り込めない可 能性がある。
 そこで本報では、条件付確率場の理論を用いて.鉄塔一祭渉破達成系モデルの各節点に作用させる変動 風速をシミュレートする。この方法では、現地で測定された変動風速の時刻歴波形を取り込んだ形で測定 点周りの任意位置の変動風速をシミュレートできるため、シミュレートされた変動風速が現地の地形因子 を考慮でき、精度が向上するものと考えられる。さらに、条件付確率場の理論を用いてシミュレートされ た変動風速を、鉄塔−架渉線連成系モデルに載荷して時刻歴応答解折を行い、現状設計結果と比較したの で報告する。



■局部座屈を考慮した送電用鉄塔の弾塑性解析(No.28)
概要
 台風時の風荷重による送電用鉄塔の倒壊例が報告されている。送電用鉄塔の崩壊までの変形挙動を把握 するためには、複雑な降伏条件下での弾塑性解析などの材料非線形解析と、大変形などの幾何学的非線形 解析を同時に考慮した複合非線形解析が必要である。このような複合非線形解析は有限要素法を用いて行 うのが一般的であるが、実物大の解析を行う理論も複雑で計算に膨大な時間と容量をとる。
 そこで本研究は鉄塔モデルの最大耐力とその時の変位を簡単に求める方法として、平面骨組構造物の部 材の局部座屈を考慮した剛性マトリックス法による弾塑性解析プログラムを作成した。送電用鉄塔の一部 である簡単な平面骨組モデルを対象に厳密な複合非線形解析結果と提案した簡易法の解析結果を比較検討 したのでここに報告する。



■建屋上に搭載される無線通信用鉄塔の構造合理化に関する検討(No.27)
概要
 変電所や開閉所などの電気所本館建屋内の平面計画および建物規模はかなり標準化してきているが、 機器の種類や配置を見直せば、建屋寸法を更に縮小できる可能性がある。このとき、建屋の形状に応じ て建屋の上に搭載される無線用鉄塔の形状も変わってくる。
 従って、建屋と鉄塔を含んだ総合的な経済性の評価を行うためには、建屋上に搭載される無線通信用 鉄塔の形状、および構造についての経済性の検討を行う必要がある。
 さらに、無線通信鉄塔はアンテナおよび鉄塔の風速荷重が支配的であり、たわみ制限で部材が決定 されることが多いため、送電用鉄塔とは最適鋼管サイズシリーズが異なると考えられる。
 そこで、鉄塔の根開き/高さ、使用鋼材(鋼管、山形鋼)および結構(ダブルワーレン結構、V結構) を変化させて試設計を行い、無線鉄塔の形状および構造について経済性の検討を行った。さらに、無線 通信鉄塔に最適な鋼管サイズシリーズを検討し、それに応じた主柱材の継手の検討を行った。



■送電用鉄塔に作用する外力と鉄塔挙動の相関に関する基礎的研究(No.27)
概要
 送電用鉄塔の支配荷重は風荷重である。送電用鉄塔が支持する架渉線は、変動する風速を受けて変形 し、張力変動が生じる。このとき、鉄塔塔体部には、風速変動と架渉線の張力変動が作用して複雑な動 的挙動を示す。しかし、現行設計が取り扱う荷重はほとんど静的荷重である。
 最近では、鉄塔−架渉線連成系モデルを用いて時刻歴風応答解析を行った研究例もいくつか見られる が、データ量の多さと解析時間が長くなるため、今後一般的な設計に用いるためにはモデル化の方法を 簡便化する必要があると考えられる。特に、架渉線の張力変動の取り扱い方法を単純化できれば、時刻 歴風応答解析が一般的に使われる手法になる可能性がある。
 そこで架渉線の張力変動の取り扱い方が単純化できる見通しを得るため、本研究では山間部で測定さ れた鉄塔挙動の時系列データからルートコヒーレンスやパワースペクトルを求め、外力(風速変動、架 渉線張力)と鉄塔挙動の関係を定量的に把握し、それぞれの関係を振動数レベルで明らかにする。



■架渉線の幾何学的非線形性を考慮した鉄塔−架渉線連成系の静的な3次元応答解析(No.23)
 近年、送電容量を通信量の増大に伴い送電用鉄塔や支線式鉄塔の大型化が見られるが、このような傾向 は鉄塔一架渉線からなる連成系の変形性状に少なからず影響を与えると考えられる。特に送電用鉄塔は架 渉線で隣接鉄塔とつながれており、これら連成系の構造物の力学的挙動は、お互いに影響を受け合い、単 独系の構造物の挙動とは異なると考えられる。本研究はこのような状況をふまえ架渉線の幾何学的非線形 性を考慮した鉄塔一架渉線からなる連成系の応力解析を行い、従来設計法、鉄塔単独での解析、実測値と 比較し、鉄塔への架渉線の幾何学的非線形性の影響を明らかにすることを目的としている。


■鋼管単体鉄塔および架渉線からなる連成系の応答解析方法(No.20)
概要
 近年、周囲の建物の高層化および送電容量の増大に伴い、従来よりも送電用鉄塔は大型化している。こ のことは、送電用鉄塔として通常使われている四角トラス鉄塔に限らず、最近都市周辺部で見られる景観 への調和を考えた鋼管単体鉄塔についても同様の傾向にある。
 送電用鉄塔は、重量が高さ方向に連続して分布する塔体部と、鉄塔型や規模によって重量および取付位 置が異なる腕金部からなっている。その他送電用鉄塔には架渉線と踊場や梯子などの付帯設備が取付けら れており、これらの組み合わせの違いと高さによって振動性状が異なる。
 このような観点から、これまでに振動に対する安全性の検討が行われているが、これらは、主に四角ト ラス鉄塔を対象としており、架渉線と鋼管単体鉄塔からなる連成系の応答解析はほとんど行われていない。
 そこで、大型鋼管単体鉄塔が増加しても対応できるよう鋼管単体鉄塔および架渉線からなる連成系の動 的応答解析方法の概要をここに報告する。



■鉄塔−架渉線連成系構造物の動力学的特性(No.19)
概要
 塔状鋼構造物が一般的な建築構造物と異なる構造上の特徴のひとつに、用途によって質量・配置・構造 特性の全く異なる付属物が取付けられる点があり、付属物の挙動が風や地震などの動荷量に対する構造物 全体の動的挙動に大きな影響を及ぼす場合が多い。このように特異な動的挙動が予測される塔状鋼構造物 の中でも特に送電鉄塔に見られる架渉線と鉄塔からなる連成系構造物に着目し、その動特性を調べる。
 この種の塔状鋼構造物の特徴は、第一に架渉線自身が独自の振動特性を持っている点で、比較的低振動 数の横波モードから高振動数の縦波モードまで多数の振動モードが存在する。第二に架渉線を介して多数 の塔状鋼構造物が連結されていることにより、隣接する鉄塔群の間で連成振動し、単独の鉄塔とは異なる 動特性を持つ点である。このため、複雑な振動系を構成することになり、動荷重の作用を受けたときの応 答は、単独の構造物とは異なることが予想される。
 本研究では、鉄塔一架渉線連成系の動的応答が架渉線の存在によりどのような影響を受けるかという点 を主眼に、単純化された模型を用いた振動台による動的載荷実験、および有限要素法による解析を行った。 実験から得られたデータによりシステム同定の手法を用いて振動中の鉄塔試験体の動特牲を調べると共に、 これらの結果を検証しながら架渉線の非線形挙動を考慮に入れた数値解析法の精度を調べた。



■コンパクト送電線の試設計(No.18)
概要
 電力需要は今後とも増加することが予測され、その増加に対応すべく都市周辺部では、盛んに送電線鉄 塔の増強工事が進められている。しかし、環境や用地面の制約から今後、従来型送電鉄塔の建設は困難に なると考えられる。そこで、架空送電線の所要スペースをコンパクトにできれば、既設送電線の線下幅内 での昇圧による増容量や、新設ルート開拓の有力な手段として、将来都市部への電力輸送力の強化に与え る効果は大きいと考えられる。
 このため、電力中央研究所では、高分子碍子型の絶縁アームおよび相間スペーサを開発、適用し、66〜 154KV送電線をコンパクト化する研究を進めている。
 その一環として、現在使われている66KV送電線路のルート幅、および鉄塔敷地面積を替えることなく、 154KVに昇圧する可能性を検討した。
 また、66KV鉄塔を154KVに昇圧した場合の影響を把むために、66KV装柱で使用実績のあるセミモノ コックタワーについて荷重径間および速度圧の違いが鉄塔重量、基礎反力に与える影響についても検討を 行った。



■圧延山形鋼の座屈解析について(No.15)
概要
 通常の送電鉄塔や無線鉄塔はトラス構造からなり、主応力材には外力による引張応力と圧縮応力が生じ る。特にトラス構造の終局耐力は主応力材の座屈耐力で定まり、部材の降伏耐力を越えることはない。
 座屈耐力は細長比が80前後で斜材に多くみられる長柱座屈(弾性座屈)と、主柱材に多い短柱座屈(非 弾性座屈)とがある。
 現在、単一柱の長柱座屈の場合はオイラーの式でまた、短柱座屈の場合は実験結果から求められた J'ezekの式やEngesserの式で座屈耐力を推定している。
 しかし、主柱材によくみられる短柱座屈の場合は、断面の一部が塑性化するとともに、中間に中ボルト 接合からなる継手があったりするため、その座屈耐力を精度よく推定することは難しい。
 今回の研究では、このような中間に中ボルト接合のある山形鋼の座屈耐力を推定する解析方法を提案す るとともに、その解析精度を圧縮試験結果から確める。
 今回提案する座屈解析方法を用いれば、引張耐力だけでなく圧縮耐力も含めた合理的な部材中間継手構 造の検討、端部の剛性が座屈耐力に与える影響等、今まで試験装置の容量の制限をうけた実験結果にたよ らずに、解析結果から検討することができる。



■ボルト接合部の剛性を考慮した複合非線形解析に関する研究(No.14)
概要
 送電鉄塔や無線鉄塔のようなトラス構造の主応力材には作用するが外力により、引張応力と圧縮応力が 主に生じる。特にトラス構造の耐力は、主応力材の座屈強度によって決まる場合が多い。
 このような座屈は、圧縮応力が作用したときの釣り合い状態に材料の降伏現象が加わった不安定現象に よって生じる。不安定現象による崩壊は材料の特性のみならず、外力の作用状態と、構造物とその構成要 素の幾何学的な形態に影響されるため、材料の非線形性と有限な変位を考慮した複合非線形解析によって 評価する必要がある。
 さらに、送電鉄塔では溶融亜鉛めっきが施されたボルト接合が使われており、その接合部の剛性が構成 材の応力変形挙動に与える影響も考慮する必要がある。
 本研究では、各増分区問内にも複合非線形性を連成して考慮できる、増分摂動法を適用した一般化塑性 ヒンジ法による複合非線形解析方法、およびボルト接合部を局所的応力集中として捉える考え方を適用し て、その剛性を定式化する方法を提案する。
 さらに立体架構による加力試験結果と、接合部を弾性支承に置換したモデルを使った増分摂動法を適用 した一般化塑性ヒンジ法による複合非線形解析結果とを比較し、送電鉄塔や無線鉄塔のような溶融亜鉛めっ きが施されたトラス構造の崩壊現象を、今回提案した解析結果から想定できることを確かめた。
 1)各基礎式をTaylor展開することで、剛性方程式に関する摂動方程式を求める方法を示した。
 2)接合部を弾性支承に置換したモデルを使った、増分摂動法を適用した
   一般化塑性ヒンジ法による複合非線形解析結果から、送電鉄塔や無線
   鉄塔が倒壊するまでの荷重変形挙動を想定できることを示した。
(用語の説明)
※材料の非線形性
降伏点近傍から最大耐力までの材料特性を示し、今回は弾性係数の3%の剛性で直線近似した。
※有限な変位
荷重が加わったときの変形状態(各構成材の延び縮み)を示す。
※増分摂動法
荷重を分割して加え、このときの各増分区間ごとに材料の歪硬化の影響他全ての状態量をTaylar展開して、所定の次数までの応答結果を構造解析に反影する方法を表す。
※一般化塑性ヒンジ法
部材が完全に塑性化したとき、塑性点をヒンジに置換えて、ヒンジ部の塑性挙動を軸力と曲げを連成させて構造解析する方法を表す。
※弾性支承
接合部のように母材と剛性が異なる部分を、特定の剛性をもったバネに置換える。



■架渉線の影響を考慮した送電用鉄塔や支線式鉄塔の動的な解析方法に関する研究(その2振動台実験)(No.7)
概要
 今まで地震により、送電用鉄塔や無線用鉄塔のような塔状鋼構造物の部材が損傷したことは少ない。 このため、通常の設計では多くの場合、地震荷重による設計は省略されてきた。しかし、最近の塔状鋼 構造物は大型化し、総重量も増大しているため、地震荷重に対する架構の安全性の再検討が必要と思わ れる。
 このような点に着目し前報では、送電用鉄塔や支線式鉄塔のような架渉線類と連結された架構も含め た、塔状鋼構造物の振動解析の方法を提案した。
 今回はこのような塔状鋼構造物の質量の分布性状、架渉線類およびそれらで連結された隣接架構が動 的挙動におよぼす影響を調べるため、正弦波による共振実験と実地震波による応答実験からなる振動台 実験を行った。このような実験の結果から次のような結論が得られた。

 1) 2次の振動モードが卓越している塔状鋼構造物では、総質量に比べ頂部に付加された質量が小さ いほど頂部のせん断力係数の増加率は大きくなった。しかし、新耐震設計基準に定められた値を上廻る ことはなかった。
 また、頂部の変位は頂部に小さな質量が付加されると異常に大きくなることが判った。
 2) 1次の振動モードが卓越している場合、せん断力係数は新耐震設計基準を上廻った。このよう な塔状鋼構造物では、せん断変形を考慮した曲げせん断系から求められるせん断力係数分布を採用する 必要がある。
 3) 架渉線類と塔状鋼構造物からなる連成系の場合は、線路方向から加振されたときに最大応答値 が得られた。また、線路方向よりも線路直交方向に架渉線による減衰効果が認められた。

 なお、次回は架渉線類との連成系を含めた塔状鋼構造物の振動解析に必要な系のモデル化の方法を提 案するため、今回の実験結果を使ったシステム同定を行い、振動解析に必要な諸元を求める予定である。 さらにその結果を使い、前報で紹介した振動解析プログラムにより、実在する塔状鋼構造物の地震に対 する安全性を検討してゆきたい。



■架渉線の影響を考慮した送電用鉄塔や支線式鉄塔の動的な解析方法に関する研究(その1)(No.6)
概要
 送電容量と通信量の増大に伴い送電用鉄塔や支線式鉄塔の大型化が見られるが、このような傾向は鉄 塔一架渉線系の力学的挙動に少なからず影響をおよぼすことが予測される。特に鉄塔の大型化に伴う積 載重量を含めた総重量の増大により、地震荷重に対する鉄塔の安全性について検討する必要があると考 えられる。
 本研究ではこの点に着目し、送電用鉄塔や支線式鉄塔のような架渉線と連結された構造物の耐震検討 を行うため鉄塔一架渉線からなる連成系の動的解析方法の提案を行い、提案した方法に基づいた応答解 析プログラムを開発した。開発したプログラムにより、架渉線と鉄塔との連成を考慮した地震動に関す る動的応答解析を行うことができる。本プログラムはモード法ではできなかった架渉線の非線形性と、 線形な挙動を示す鉄塔とについて全く同一の解析時刻ごとに2方向から加わる地震動にたいする応答解 析が行える。この他鉄塔に加わる不平衡な荷重に対し、図心と剛心との偏心を考慮したねじれ振動、及 び実際の地震波の伝幡状況に合わせた伝達速度と入力方向も考慮することができる。
 この他、構造物の動的な耐震検討を行う場合に必要な入力用地震波を選定する1つの方法を示した。
 なお次号では”その2”として、振動台を使った連成系モデルによる振動試験結果から得られた応答 特性を使い、今回開発したプログラムによる動的応答解析方法の妥当性について述べる予定である。