■増設基礎を用いた嵩上げ工法の開発(No.42)
概要
架空送電線の線下問題(建築物・樹木等との離隔不足)の設備対策として,既設鉄塔と基礎の強度に裕度がある場合は嵩上げで対応し,裕度がない場合は鉄塔建替で対応している。
しかし,一層のコスト低減を図る観点から,強度に裕度がない場合でも既設設備(鉄塔やその基礎)を最大限に活用するために,嵩上げに伴う強度不足を新たな基礎に負担させる工法を開発した。
187kV阿南幹線鉄塔嵩上げ工事では,必要な高さの嵩上げを行うと既設基礎が強度不足となるため,この既設設備を最大限に活用した嵩上げ工法を採用した。
今回,増設基礎を用いた嵩上げ工法の採用に当り,既設基礎と増設基礎への荷重分担などの性能を実証するために,実規模部分モデルによる静的載荷試験を行い妥当性を確認した。
また,増設基礎は,現地が山間地で資機材の運搬が困難なこと,狭い場所での作業となることから,高耐力マイクロパイル工法を採用した。
■狭根開き三角鉄塔の開発(No.38)
概要
送電用鉄塔の建替工事を行う場合,市街地およびその周辺では新しい用地の確保が困難化しており,狭い既設鉄塔用地内で建替を鉄塔建設を行わなければならない事案も発生してきている。
今回,66kV寒川線鉄塔建替工事では,三脚化することで,狭い敷地内での建替に対応できる狭根開き三角鉄塔の適用検討を実施した。
狭根開き三角鉄塔は,既設鉄塔敷地内で既設設備を運用しながら建設でき,四角鉄塔に比べて基礎体の数が少なくなるため,建設費のコストダウンが期待できる。しかし根開きを狭くすると鉄塔のたわみが大きくなり,付加応力の発生が予想され,鉄塔強度を増す必要がある。
このため鉄塔のたわみを制限する設計を行い,同じ断面積で受風面積が小さくなる厚肉小口径鋼管を採用した。また実線路への適用に当り,静的載荷試験など各種試験で設計の妥当性を確認した。
■三角タイロッド鋼管鉄塔の開発(No.34)
概要
送電線のルート選定に当たっては,国立公園など自然景観の豊かな地域を極力避けるとともに,鉄塔
立地点を山腹部や山陰とするなど可能な限り目立たなくする工夫をしている。
送電線が市街地,国立公園,幹線道路などの周辺を通過する場合,状況によっては景観への配慮につ
いての要望があり,鉄塔については,1970年ころから鉄塔形状や色彩に工夫を凝らした環境調和タイプ
の鉄塔が採用されている。しかし,これらの鉄塔は,鉄塔種類によって異なるものの,通常使用してい
るトラス鉄塔に比べコストが割高で,鉄塔形状によっても異なるが2〜5倍になっている。
近年,電力会社においては,設備コストの抑止が大きな命題となっている。そこで,低コストと環境
への配慮を同時に達成できる方策の一つとして,部材が目立たず,鉄塔の透明感や軽快感をねらい,主
柱材を鋼管3本とし,腹材にタイロッドを使用した三角タイロッド鋼管鉄塔(以下 三角タイロッド鉄
塔という)の開発検討を行った。
三角タイロッド鉄塔は,各種条件の試設計を行い,経済比較を行った結果,主荷重方向の塔体幅を広
くした二等辺三角形状として,ベンド上の骨組を鋼管のシングルワーレン,ベンド下の骨組をタイロッ
ドの腹材としたタイプが,従来の四角鉄塔に比べてコストダウンが可能であることが確認できた。
また,塔体の縮小部分骨組による載荷試験,タイロッドの疲労試験およびタイロッドの渦励振の検討
を行った結果,三角タイロッド鉄塔の実用化の見通しがついた。
■ツイスト鉄塔の応力検証試験の概要(No.30)
概要
電力需要増加に対する一般的な対応策として、既存送電用鉄塔の建て替えや増強により高塔化し、送
電設備を大型化する方法があるが、鉄塔敷地の有効活用並びに、工事期間中の停電時間を短くするため
の配慮等が必要である。
今回報告する『ツイスト鉄塔』は、このような電力需要増加に伴う送電用鉄塔建て替えのために開発
された。ツイスト鉄塔は、立て替え鉄塔の大型化による鉄塔敷地の追加収得が困難な場合などで効果を
発揮する形状で、最下パネルのみ45°回転させた鉄塔である。
本報では、ツイスト鉄塔の1/2縮小モデルを用いて行った載荷試験結果について報告する。
なおツイスト鉄塔は、電源開発(株)が(株)ケーエム送電エンジニアリングに委託し、開発した
ものであり、そのうちの検証試験には、日本鉄塔工業(株)が供試体の設計製作を担当、日本電炉(株)
が試験を担当した。
■三角鉄塔に関する研究(No.29)
概要
現行の四角断面を有するトラス構造の送電用鉄塔(四角鉄塔)は、長年の研究開発の積重ねの結果、
機能性、経済性に優れたものとなっている。しかしながら、さらなる建設コストの低減を図るため、鉄
塔だけでなく基礎を含めて検討したところ、基礎引揚力の小さい箇所に適用される鉄塔において井筒基
礎や場所打ち杭基礎等適用する場合に、これまでの四角鉄塔に代えて三本脚の鉄塔(三角鉄塔)を用い
ることにより建設コストの低減ができる可能性が有ることが分かった。
そこで、三角鉄塔を適用する場合の、塔体および腕金の最適形状ならびに構造および設計手法につい
て検討するとともに、風洞実験や実規模載荷試験を実施し、現行のクレモナ解析を用いた実用的な設計
手法を確立した。
これらの結果から、77kV栄屋乳業矢作線の2基に三角鉄塔を適用し、建設コストダウンの効果を確認
できた。
■常陸那珂火力線景観配慮鉄塔の腕金継手部部分載荷試験(No.26)
概要
常陸那珂火力線は茨城県の常陸那珂火力発電所から、那珂変電所を結ぶ500kvの送電線であるが、発電
所周辺地区は国際港湾公園都市の計画地域となるため、発電所から引き出される4基の鉄塔については景
観を配慮したデザインが必要となった。
そこで、学識経験者や行政関係者を含む「常陸那珂火力発電所景観対策委員会」を設置し、自然景観と
の調和を図り、従来にない軽快感を演出することに主眼をおいた鉄塔デザインの検討が行われ、塔体につ
いては、シングルワーレン結構、アーム部については変断面I形鋼を採用したシンプルな鉄塔が選定され
た。
腕金は変断面I形鋼の片持梁構造で、継手部は添え板継手構造となっているが、その継手部の母材間に
板厚差があるため、母材と添え板の間に板厚差を埋めるフィラープレートが必要となる。
「JEC-127-1979」や「道路橋示方書」によると、ボル卜接合の場合、フィラープレート厚さが6mmを
超える場合にはフィラープレートが母材の移動に追従しないために生じるボルトの二次的な曲げ応力に対
し、フィラープレートに余長部を設け、母材とフィラープレートの断面積比から換算するボルトを追加す
ることが規定されている。
しかし、板厚差6mmを境界値とする根拠が明確でないことや支圧せん断型ボルトの継手強度に関する試
験が少ないことから、支圧せん断型ボルトに関し、以下を確認する目的で継手部の部分載荷試験を行った。
1)板厚差が6mmまでは、フィラープレートの余長部を設けたり、ボルトを追加したりする必要がない
ことを確認する。
2)板厚差が6oを超える場合、フィラープレートに余長部を設け、断面積比による本数のボルトを追
加することの効果の有無を確認する。
3)ボルトの差し込み方向より、継手強度に変化があるかを確認する。
本稿では、これらの確認事項に対する試験結果と設計への反映方法について報告する。
■セミモノコックタワーの紹介(No.24)
概要
セミモノコックタワーの採用例を紹介します。
弊社では、中部電力株式会社殿と荷重規模の大きな箇所でも適用可能なセミモノコックタワーの開発研
究を昭和63年度から始め、平成2年に実規模載荷試験を実施した送電用鉄塔として充分な強度・耐
力を備えていることを確認しました。
平成3年に実線路へ初めて採用されましたが、最近では通信用鉄塔へも採用されており、デンロ技報
No.23に詳しく紹介しています。ここでは採用例と特徴を中心に紹介します。なお、セミモノコックタワー
の開発研究については、デンロ技報No.14、15をご参照下さい。
■154KV用高分子絶縁アームの機械的性質(No.21)
概要
都市やその周辺部の電力需要の増加と、それに対処するための送電ルートの確保の困難さを解決する手
段として、架空送電線の線下幅や鉄塔の敷地面積の所要スペースをコンパクト化することが有効と考えら
れる。線下幅の縮小には、高分子絶縁材を用い、在来型送電鉄塔の鋼材アームと磁器製支持碍子を一体化
した絶縁アームの採用が効果的である。この高分子絶縁アームは、耐力を担うFRP製のコア材に、表面
絶縁用のシリコーンゴム製のカバー材をかぶせた複合がいし型のユニットで構成される。このため、架渉
線張力によりFRPコア材が受ける荷重の影響を把握する必要がある。
そこで、FRPコア材の機械力についての基礎的特性を把握するため、FRP素材の静的および高速載
荷試験を行うとともに、高分子絶縁アームの荷重に対する応力変形挙動を調べるため、3本のユニットで
構成される耐張型154KV用試験体を用い、線路方向への静的載荷試験を行った。
本報では、これらの試験結果ならびに高分子絶縁アームと鋼材アームについての比較、検討結果を紹介
する。
■セミモノコックタワーの開発研究(下)(No.15)
概要
市街地や風光明媚な地域を通る送電線には、環境に対する社会的要請および土地の制約や地価の問題か
ら、従来のアングル鉄塔、鋼管鉄塔に代わりモノポールと言われる環境調和鉄塔が採用されるようになっ
た。
しかし、従来構造のモノポールでは製造面(成型・亜鉛めっき等)、運搬面、経済性の面で限界があり、
大規模荷重の領域での適用は難しい状況にあった。
一方、電力需要の増加からますます送電容量の大きな設備が要求されるようになり、大規模荷重にも適
用できる環境調和鉄塔が必要となってきた。
このため、荷重規模の大きな箇所でも適用可能なセミモノコック構造を用いた新構造のセミモノコック
タワーの開発研究を進め、最終試験である実規模載荷試験により送電用鉄塔として十分な強度・耐力を備
えていることを確認したので報告する。
セミモノコックタワーの概要を図−1に示す。
■セミモノコックタワーの開発研究(上)(No.14)
概要
市街地や風光明媚な地域を通る送電線には、環境に対する社会的要請および土地の制約や地価の問題か
ら、従来のアングル鉄塔、鋼管鉄塔に代わりモノポールと言われる環境調和鉄塔が採用されるようになっ
た。
しかし、従来構造のモノポールでは製造面(成型・亜鉛めっき等)、運搬面、経済性の面で限界があり、
大規模荷重の領域での適用は難しい状況にあった。
一方、電力需要の増加からますます送電容量の大きな設備が要求されるようになり、大規模荷重にも適
用できる環境調和鉄塔が必要となってきた。
このため、荷重規模の大きな箇所でも適用可能なセミモノコック構造を用いた新構造のセミモノコック
タワーの開発研究を進め、最終試験である実規模載荷試験により送電用鉄塔として十分な強度・耐力を備
えていることを確認したので報告する。
|