その他
 
■CIGRE(国際大電力システム会議)への参加状況報告(2021年)(No.74)
概要

CIGREとは,フランス語の Conseil International des Grands Réseaux Électriques を略号にしたもので,日本語では「国際大電力システム会議」と訳されています。

このCIGREは,すべての人に持続的な電力供給を可能とするため,世界中から90ヵ国以上の電力システムの専門家が参加し,電力技術に関する調査や技術問題を討議しながら知識の共有を促進することを目的として,1921年にフランス・パリで設立された民間の非営利団体です。昨年2021年は節目となる設立100周年にあたりました。

このCIGREに,当社は一昨年2020年9月に入会しており,主に次の活動に参加しています。

(1)「既設架空送電線支持物の耐力向上」をテーマとしたワーキンググループのレギュラーメンバーとして,2023年に完成予定の技術報告書の一部を担当している。

(2)「2021年100周年記念パリ大会(Vitual Centennial Session)」におけるグループディスカッションミーティングで,「無停電で行える山形鋼鉄塔の主柱材取替工法(ジャッキアップ工法)」のプレゼンテーション(オンライン,英語)を実施した。

(3)「2020年パリ大会論文抄訳国内作業会」に参加し,分担した2つの2020年パリ大会の論文抄訳を作成し,そのプレゼンテーション(オンライン,日本語)を実施した。

本報では,CIGREの概要と入会後約1年間における当社の参加状況やプレゼンテーションの内容を紹介します。

 
■ギャップ式避雷装置「RYGAP(ライギャップ)」の送配電設備への適用研究(No.73)
概要

当社では,2002年に電気・通信設備などの直撃雷対策装置の研究開発に着手し,電磁気学理論と株式会社四国総合研究所での6回の試験をもとに,ギャップ式避雷装置(商標登録名;「RYGAP(ライギャップ)」,特許登録済)を開発しました。

開発後,主に携帯電話基地,無線中継所および空港施設など多くの箇所にご採用頂き,従来の避雷器や耐雷トランスでも防ぐことができなかった直撃雷による通信機器などの被害の激減に繋がっています。

その概要は,デンロ技報No.44「雷害対策に関する先端技術概論」の中で,“大放電耐量型低圧保護ギャップ式避雷装置”として紹介しました。

一般配電設備に関しては,雷害が多い地域でも避雷器を設置するなどで設備そのものの雷害事故は減少傾向にあるようですが,現在の高度情報化時代におけるコンピュータなどの電子機器類は雷サージに弱く,被害は増える傾向にあると言われています。

一方,送電設備でも,主として酸化亜鉛形素子から成るバリスタ(避雷器)が使用されていると認識していますが,限界ピーク電流(サージ耐量)を超えるサージ電流では焼損することがあります。その原因は落雷成分に含まれる短波尾大電流よりも雷サージの継続時間が長いためエネルギーが多大な長波尾小電流により焼損するものと考えられます。

そこで,送配電設備用としてサージ電流耐量の大きいギャップ式避雷装置の開発に取り組んでいます。その開発過程では,2012年〜2019年にかけ,一般財団法人電力中央研究所で3回の実証試験を行い,良好な結果を得ることができました。その1回目の実証試験についてはデンロ技報No.56とNo.57の「ギャップ式避雷装置の長波尾小電流雷に対する有効性についての実験的研究」で紹介しました。

これまでの開発の経緯,試験の概要,装置の概要,および送配電設備用ギャップ式避雷装置の製品化に向けた今後の課題について紹介します。

 
■建築・土木分野のBIM/CIMの動向と鉄塔への応用(No.71)
概要

CALS( Computer Aided Logistics Support)と呼ぶシステムが1985年に米国国防省において軍需品等の調達をコンピュータで支援することを目的に導入されました。

これに端を発し, 2002年に我が国の建設省(当時)は, 建設CALS/EC(Continuous Acquisition and Life-cycle Support/ Electronic Commerce)と呼ぶ公共事業の生産・調達・運用などにおける支援統合システムの導入・普及を始めました。これは建設情報の電子化で業務のワークフローを改革するとともに電子商取引を推進することで生産性を向上させることを目的としています。これにより, 電子入札, CAD図面・工事写真などの電子納品, 情報化施工などが行われてきました。

これを参考に鉄塔の業界においても, 鉄塔の基本設計情報を電子データで共有することで,製作受注者はこれに製作情報を付加して 作図・現寸CADの入力データとし, その処理結果を現寸図・製作図,更には数量データやNCデータなどに加工して鉄塔の生産性の向上につなげてきました。

その後15年ほどが経過し, 3次元CAD,ICT(情報通信技術)などが進化・普及する中で,建築・土木分野では,更なる改革として3次元データの建物モデルに部材等の属性情報を盛り込んだBIM(Building Information Modeling)やCIM (Construction Information Modeling)のシステムが世界的に普及し始めています。

そして近年, 国土交通省では, BIM/CIM(Building / Construction Information Modeling, Management)と称して, 計画, 調査, 設計段階から3次元モデルを導入することで, その後の施工, 維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし, 一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を目指しています。

この目指す方向は, 建築・土木分野のみならず, 鉄塔分野でも参考にし, 応用できる可能性があるため, まずは, その概要や建築・土木分野での活用例を紹介し, 鉄塔分野への適用の可能性について本稿で触れてみたいと思います。

 
■金属摩耗量計測に関する事例紹介(No.71)
概要

架線金具は電力線や架空地線を送電鉄塔に引き留めるための金具であり,前後径間に吹く風の差異で支持点に生じるモーメント等の力が加わらないように可動する構造となっている。風の変動による電線の動揺や不平均張力によるがいし装置の動揺が頻繁に生じる環境では,架線金具の可動点が摩耗して鋼材断面が減少する恐れがあるため,定期的に架線金具の点検が行われている。

現在,架線金具の摩耗に対する点検は,昇塔して金具の外観を観察するか,ノギスで測定する方法が一般的である。しかしながら,この点検方法では,活線時に作業することが困難である。

そこで,市販のデジタルカメラで撮影した画像データを用いて,架線金具の摩耗量を推測する手法を考案した。この手法を使えば,活線時でも架線金具の点検を安全に行うことができる。

今回,4社共同で「地線金具磨耗量調査業務」を実施し,実鉄塔で摩耗量推測方法を検証した。

本稿では,その概要を報告する。

 
■鉄塔の元位置建替え工事に伴う3次元クリアランス検討の紹介(No.70)
概要

鉄塔建替え時の工法には,元位置包込み工法,ラップ工法(2脚1/2面包込み工法),上部包込み嵩上げ工法などがある。これらの工法で建替えを行う場合,新設鉄塔設計時に既設鉄塔と新設鉄塔のクリアランス検討が必要となる。

2次元空間(平面図)での検討は部材間のクリアランスを立体的に検討することや部材の厚み,形状を正確に表現することが難しいため,現地で部材同士が干渉して組立できなくなることがある。これらの不具合を事前に防ぐには,

3次元CADを使用し,立体的に検討することが有効な手段である。

当社では,自社開発した「鉄塔のバーチャル仮組システム」を応用して,3次元空間での鉄塔建替え時の既設鉄塔と新設鉄塔とのクリアランス検討ができる。

そこで本稿では,そのクリアランス検討の概要を紹介する。

 
■「墜落制止用器具の規格」改正の概要と選定等について(No.69)
概要

建設業における労働災害死亡者数は墜落・転落が最も多く毎年40%前後を占めている。

このような状況を鑑み,厚生労働省は2019年2月1日に,労働者の墜落を制止する器具の安全性の向上と適切な使用を図るため従来の「安全帯の規格」の全てを改正し,「墜落制止用器具の規格」(平成31年厚生労働省告示第11号)として告示した。

現行規格の安全帯の着用と販売を2022年1月から全面的に禁止するとともに,一定以上の高さの場所で着用する安全帯をフルハーネス型に限定することが示されている。

本稿では,「墜落制止用器具の規格」改正の概要を説明するとともに,フルハーネス型を正しく安全に使用するために,その構造や特長およびその使用に当っての注意点など紹介する。

 
■形鋼製品の最新製造技術について(No.69)
概要

本稿は,近年の鉄鋼における最新の製鋼技術,形鋼圧延技術および形鋼材質制御技術の概要を解説し,それらの技術で開発された商品事例を紹介することで,鉄塔用山形鋼を含めた将来の新しい形鋼商品開発の一助に資するものである。

具体的には,高炉法,電炉法,直接還元鉄製造法の説明と特徴を解説するとともに,これらの鋼の製造法と最終製品との品質には直接の関係がないことを述べる。また,最終製品の品質向上に資する技術は,精錬技術と連続鋳造技術であり,その代表的な例を紹介する。

さらに,近年の形鋼圧延技術の詳細を,山形鋼,H形鋼,溝形鋼,軌条等の例で解説し,これらの製造技術の発展から数々の新しい商品が実現できたことを示す。

最後に,形鋼の材質や品質に資する最近の技術についても具体的に解説する。


それぞれの最新製造技術の具体例の紹介により形鋼が従来よりも様々な需要家ニーズに対応できることをご理解いただき,更なる発展のためにお客様から今後の新たな開発ニーズをご提案いただければ幸いである。

 
■部材表面の付着塩分量測定(No.68)
概要

橋梁や鉄塔などの鋼構造物に対して補修塗装や塗替え塗装を行う場合,被塗面に海塩粒子などの塩分が付着したまま塗装を行うと塗膜の層間剥離や膨れの原因となる。そのため,沿岸部に立地している構造物など,塩分の付着が懸念される場合は,塗装前に部材表面の付着塩分量測定を行い,許容値以下であることを確認する必要がある。

また,同じ部材であっても風向や三次元的配置によって,部位ごとに付着塩分量が異なる場合があり,部材の劣化予想や延命化対策検討のためのデータとして付着塩分量を測定することがある。

本稿では,部材表面の付着塩分量測定方法とその原理について紹介する。さらに,高所での作業性についても言及する。

 
■防災用ホーンアレイスピーカーとその支持物の設置事例の紹介(No.67)
概要

デンロ技報No.56では,防災用高性能スピーカーとして「ホーンアレイスピ−カー」とその支持物の概要を掲載しました。同スピーカーは,発売以来全国50以上の地方自治体に導入され,高い評価と信頼を得ており,現在も多くの地方自治体で導入に向けての検討が進められています。

ホーンアレイスピーカーおよびその支持物の設置方法は,地形,環境,場所等に応じて様々です。本稿ではその設置事例を紹介します。

 
■FBG光ファイバセンサによるひずみ測定システムの構築(No.65)
概要

光ファイバセンサを用いたひずみ測定法はいくつかの原理が提案されており,そのうち,FBG (Fiber Bragg Grating) と呼ばれる方法はひずみ測定精度も高く実用化が進んでいる。光源とセンサ間の延伸も数キロメートル規模で行うことができることや,何よりも電磁気的擾乱の厳しい影響においても,本質的に全く影響を受けないことから,風力発電機やEV自動車,リニアモーターカーを含む鉄道車両構造,送電用鉄塔の充電部付近等の強電界・強磁界環境,また各種燃料容器や貯蔵施設,化学プラント等,防爆への対応が必要な場合など,通常の電気抵抗線式のひずみゲージを適用した測定が困難な状況での代替手段としても,その有用性が注目されている。

現在FBGひずみ測定器の多くは海外メーカ製のものが主流となっており,通常よく使用されるひずみゲージ測定器と比較して価格も高い。当社はひずみゲージ,ひずみゲージ式変換器およびひずみ測定器の製造販売を長年に渡って行ってきたが,FBG測定器およびセンサを望まれる声も年を追うごとに多くなってきたことを踏まえ,FBGひずみ測定システム(FBGセンサおよびFBG測定器)の独自開発を進め,このほど標準製品として発売するに至った。

本稿では,FBGひずみ測定原理の概要について簡単に解説し,当社のFBGひずみゲージおよび測定器の構成と特徴について紹介する。

 
■岩手県工業技術センターの概要と表面処理技術の研究・開発関連設備(No.64)
概要

(地独)岩手県工業技術センターは明治6年に岩手県勧業試験所として設立された。恐らく国内でも最も歴史の長い公設試験場のひとつである。設立当初は農工部門が一体となった組織で,岩手県盛岡市の中津川沿いにあったようである。その後,盛岡市内丸地区,同津志田地区と移転を繰り返し,平成5年に現在の盛岡市北飯岡地区に移転し,翌年,岩手県醸造食品試験場と合併して(地独)岩手県工業技術センターとして発足して現在に至っている。また,平成18年には東京都立産業技術研究センターとともに全国で初めて地方独立行政法人化されている。

(地独)岩手県工業技術センターの外観写真を図に示す。敷地面積は,約68,000m²,延床面積は約16,000m²となっている。

今回は,(地独)岩手県工業技術センターが保有している主要な表面処理技術関連の分析装置,加工装置のいくつかを紹介する。

 
■送電設備に対し考慮すべき気象災害とその留意点(No.62)
概要

大気中に含まれる二酸化炭素などの温室効果ガスには,海や陸などの地球の表面から地球の外に向かう熱を大気に蓄積し,再び地球の表面に戻す性質(温室効果)がある。人間活動による化石燃料の使用や森林の減少などにより,大気中の温室効果ガスの濃度は急激に増加した。この急激に増加した温室効果ガスにより,大気の温室効果が強まったことが,地球温暖化の原因と考えられている。

地球温暖化による影響として,大気や海洋の世界平均温度の上昇,雪氷の広範囲にわたる融解,世界平均海面水位の上昇,さらに極端な高温や熱波,大雨の頻度の増加,将来の熱帯低気圧(台風およびハリケーン)の強度の増大による最大風速や降水強度の増加など極端現象の増加が指摘されている。

近年,観測史上最大を更新するような気象災害が,繰り返し発生している。最近の主なものとして,大雨では平成25年10月に東京都大島町で発生した土砂災害(犠牲者40名),平成26年8月に広島市で発生した土砂災害(前線による大雨,犠牲者74名),平成27年9月関東・東北豪雨(犠牲者8名),雪では平成23年1月の山陰地方の記録的大雪(犠牲者5名),平成26年2月の関東甲信および東北地方の記録的大雪(犠牲者40名),強風では平成24年5月に茨城県つくば市付近で発生した竜巻,平成25年9月に埼玉県さいたま市付近で発生した竜巻など記憶に新しい。

これらの気象の極端現象により,鉄塔など送電設備においても少なからず被害が生じている。

送電線路は公共の安全および電力供給の確保や社会的・経済的な要請から,必要な耐性を兼ね備えることが必要であるが,災害時において被災し,その機能が喪失した場合には早期復旧を図り,電力の安定供給を確保することも必要となる。これらのことから今後の地球温暖化による影響を想定し,事前に災害時の対応を検討することは重要である。

本稿は,近年の気象現象の特徴と今後の傾向についてとりまとめるとともに,送電設備へ影響する気象現象の概要や気象災害への対応,さらに早期対応などの減災に結び付けるための気象庁から発表される情報や気象監視についての留意事項等について紹介する。

 
■鋼構造物の建設に関連する資格の紹介(その3) 〜工事,維持管理に関する資格〜(No.61)
概要

鋼構造物建設の工程には,計画,設計,調査,建設コンサルティング(以下,コンサル),製造,検査,工事,維持管理といったものがあります。 各工程における技術者および技能者は,自工程の資格については関心を持っていても,他工程の資格についてはあまり関心を持っていないことが多いように思われます。

しかし,求められる知識や能力の一部は共通することが多く,設計に関する資格を保有することが製造,工事あるいは維持管理に関する資格取得に有利になるなど,相互に関連することが多くあります。

そこで,組織の教育や自己啓発の参考資料になればと思い,鋼構造物の建設に関する各工程の資格の紹介を全3回のシリーズに分けて連載しています。

これまで,第1回目として,建設全般および設計・調査・コンサルに関する資格を,第2回目として製造,検査に関する資格を紹介しました。

今回は,最終回として工事・維持管理に関する資格を紹介します。

 
■鉄塔など高所作業用墜落防止仮設用器具の紹介(No.61)
概要

全産業における労働災害は長期的には減少傾向を示しているが,依然として毎年1000名以上の方が尊い命を落とされている。下の折線グラフで示すように,平成18年までは首位を占めていた交通事故が減少し,代わって墜落・転落による死亡者数が平成19年を境に最も多くなっている。

このような状況下において,平成25年3月に厚生労働省告示の「第12次労働災害防止計画」では建設業の墜落・転落災害防止対策として次のような項目が打ち出されている。(一部抜粋)

  • (a)様々な場所からの墜落・転落災害防止対策の推進
    はしご,屋根等からの墜落・転落災害を防止するための機材・手法を開発し普及させる。
  • (b)「ハーネス型安全帯」の普及
    一定の条件下でハーネス型の安全帯を義務付ける等,墜落時に衝撃が少ない安全帯を普及させる。

このような背景から,今回鉄塔等の高所作業時の墜落防止器具として用いる墜落・転落防止対策として,「腿掛けベルト付安全帯」,「ハーネス型安全帯」,および送電鉄塔の建設工事用の安全対策として製品化された「キーロック方式対応ハーネス型安全帯」について説明する。

また,「ハーネス型安全帯」の有効性を発揮できる落下阻止後の救出方法について提案する。

 
■社会基盤構造物における疲労の取り扱い(その2)(No.61)
概要

本稿は,デンロ技報(No.59)に掲載した「社会基盤構造物における疲労の取り扱い」の続報である。 前稿では,疲労現象の基礎的な考え方や,道路橋床版の疲労損傷に関する検討について紹介した。

本稿では,腐食劣化した鋼材の疲労や,腐食損傷を生じた鋼板の強度評価手法に関する研究について紹介する。鋼橋や鉄塔など鋼構造物では,鋼板や形鋼が多く使用され,構造物を形成している。そこで,環境促進試験によって鋼板を腐食させた後,疲労試験を行った疲労耐久性に関する実験的研究について述べる。

 
■溶融亜鉛が満たされたままで釜板厚を測定するシステム「Kettle Doctor」の紹介(No.60)
概要

溶融亜鉛めっき加工では,亜鉛を溶解するめっき釜が必要です。

めっき釜は,めっき加工を繰り返すうちに,釜板が溶融亜鉛と結合したり,酸化したりすることで,徐々に減肉します。そして,そのまま減肉が進行して孔が開くと,溶融亜鉛が流れ出し,復旧に膨大な費用と時間が掛かります。

一方,めっき釜の取替えには釜代,釜取替工事中の亜鉛の消耗,めっき炉の解体・復旧,休業による損失など膨大な費用が掛かるため,余裕を残してめっき釜を取替えることは不経済です。

このような問題を解決する方法の一つとして,めっき釜の中に溶融した亜鉛が満たされたままで,釜の板厚を測定するシステム「Kettle Doctor(ケトル・ドクター)」を紹介します。

 
■鋼構造物の建設に関連する資格の紹介(その2) 〜製造,検査に関する資格〜(No.60)
概要

鋼構造物の建設は,計画,設計,調査,コンサル,製造,検査,工事,維持管理といった工程を踏んで完成します。各工程の技術者および技能者は,自工程の資格については関心を持っていても,他工程の資格についてはあまり関心を持っていないことが多いように思われます。

しかし,求められる知識や能力の一部は共通したり,設計に関する資格を保有することが製造,工事あるいは維持管理に関する資格取得に有利になるなど,相互に関連することが多くあります。

そこで,全3回のシリーズに分けて,鋼構造物の建設に関する各工程の資格の紹介を連載し,組織の教育や自己啓発の参考資料になればと思います。

前号では第1回目として,建設全般および設計・調査・コンサルに関する資格を紹介しましたので,今回は第2回目として,製造,検査に関する資格を紹介します。

なお,次号では,工事,維持管理に関する資格を紹介する予定です。

 
■安全帯構造指針に基づく安全帯関連器具(墜落防止装置)について(No.60)
概要

送電鉄塔や通信鉄塔など鉄塔類は高経年化を迎えるものが多く存在し,保守点検業務や補修対策を行うために昇降および高所作業の頻度が増しています。しかし,鉄塔類など地上高の高い構造物への昇降および高所作業では常に墜落災害の危険が伴います。

近年は,安全に対する意識が高まり,これら鉄塔類への安全対策として墜落防止装置を常設することが多くなってきました。また,塗装工事など補修対策では仮設用の親綱式墜落防止装置などの安全対策が多く利用されるようになりました。

しかし,従前においては,これらの墜落防止装置に対する規格等はなく,各メーカーの仕様に任されていた面があります。そこで,平成11年に改訂された「安全帯構造指針」の中で,安全帯関連器具として墜落を防止する器具の規格が制定されました。当該指針では,墜落防止装置はワイヤ・ナイロンロープ等をガイドとする「親綱式スライド」,アルミレール等をガイドとする「固定ガイド式スライド」,巻き取り部を有し頂部から吊り下げる安全ブロック等の「リトラクタ式墜落防止器具」に大別されています。

本稿では,当該指針で規定されている墜落防止装置の概要を説明した上で,鉄塔に関連の深い親綱式スライドおよび固定ガイド式スライドの墜落防止装置について紹介します。

 
■鋼構造物の建設に関連する資格の紹介(その1) 〜建設全般,設計・調査・コンサルに関する資格〜(No.59)
概要

鋼構造物の建設は,設計,調査,コンサル,製造,検査,工事,維持管理といった工程を踏んで完成します。各工程の技術者は自工程の資格については関心を持っていても,他工程の資格についてはあまり関心を持っていないことが多いように思われます。

しかし,求められる知識や能力の一部は共通したり,設計に関する資格を保有することが工事あるいは維持管理に関する資格取得に有利になるなど,相互に関連することが多くあります。

そこで,全3回のシリーズに分けて,鋼構造物の建設に関する各工程の資格の紹介を連載し,組織の教育や自己啓発の参考資料になればと思います。

今回は第1回目として,建設全般および設計・調査・コンサルに関する資格を紹介します。

なお,次号では,製造,検査に関する資格を紹介する予定です。

 
■社会基盤構造物における疲労の取り扱い(No.59)
概要

疲労現象とは,ある構造体を日常的に使用している状態で発生する破壊耐力と比較して非常に小さい断面力の繰り返し作用による破壊現象である。この現象自体は,鋼構造物によっては破壊耐力の1/10程度の繰り返し荷重によっても発生することがあるため,鋼構造物において疲労現象は必ず発生するものと考えて対応する必要がある。

そこで本稿では,疲労現象の基礎的な考え方や,例として道路橋床版の疲労損傷に関する検討について紹介する。

 
■知的財産権について(No.58)
概要

近年,企業の競争力や収益力を高めるために,知的財産管理や知的財産戦略の強化が重要視されています。

自社の技術を守ると同時に他社への権利侵害を未然に回避しながら技術開発や製品開発を行っていくことは,安定した事業を行う上で大変重要であり,そのためには知的財産についての知識が不可欠です。

そこで,本報では,知的財産権のうち企業や経済活動に関わりの深い産業財産権(「特許権」,「実用新案権」,「意匠権」,「商標権」)の概要について説明します。

 
■電解式めっき膜厚計の開発(No.58)
概要

溶融亜鉛めっきの品質を高水準で管理するためには,めっきの合金層の成長を制御し,適切な付着量とする必要がある。そのため,めっき皮膜中の合金層の厚みを測定し,管理する技術が重要となる。

一般に,溶融亜鉛めっきの付着量測定には,重量計測,膜厚計による測定および断面観察などの方法が用いられている。このうち,重量計測および膜厚計を用いた方法は操作が簡便であるが,めっき皮膜全体の厚さのみが測定可能であり,めっき皮膜中の合金層の厚さは測定できないという問題がある。また,顕微鏡による断面観察の場合,溶融亜鉛めっき鋼材の切断が必要となる。 

一方,比較的簡単に亜鉛層と合金層とを区別して評価できる方法として定電流電解法があり,電気亜鉛めっき処理された製品に用いられている。この方法は,めっき面を陽極(アノード)として定電流電解し,めっき皮膜の溶解に要した電気量から,めっき皮膜の厚さを算出する方法である。しかしながら,この方法は溶融亜鉛めっき鋼材への適用の可能性や判定の最適条件などについては検討されていなかった。また,屋外にある構造物に適用することを考えた場合,できるだけ簡便に評価できる方法であることが望ましい。

以上の観点から,本研究では溶融亜鉛めっき鋼材に対する電解式膜厚評価法の最適条件を決定するとともに,装置の簡素化について検討した。

 
■ギャップ式避雷装置を用いた長波尾小電流雷に対する雷害対策(No.57)
概要

電気通信設備の雷害対策は,これまで種々の方法や装置が検討され,設計・施工されているが,十分な効果が確認されているとは言えない面がある。その理由のひとつには,冬季雷や多重雷の特徴ともいえる電流値は小さいが電荷が加わる継続時間が比較的長い長波尾小電流雷に対する耐雷設計が不十分であったり,考慮されていなかったりすることがある。

その長波尾小電流雷に対する対策用ツールとして,株式会社メカトロ技研は「ギャップ式避雷装置」を研究開発し,2011年に財団法人電力中央研究所 電力技術研究所 大電力試験所で実験を行ない,良好な性能を確認した。

このことは,前報デンロ技報No.56で紹介したが,本稿では,この「ギャップ式避雷装置」を用いた雷害対策の概要や施工例を紹介する。

 
■防災放送用に高い遠達性を実現したホーンアレイスピーカーおよびその支持物の紹介(No.56)
概要

防災行政無線(同報系)ネットワークは,全国の約76%の自治体に構築されており,防災情報伝達の有効な手段の一つとして運用されてきました。しかし,2011年に発生した東北地方太平洋沖地震では,防災行政無線から「音が聞こえなかった」という事実が明らかになり,各自治体はこの問題の解決を迫られています。音声の遠達性については,19年前の研究で指摘されていましたが,効果的な対策が実行されずに現在に至っています。

この問題を解決する方法として,従来型防災行政無線用スピーカーの2〜3倍の遠達性と高い明瞭性を実現したホーンアレイスピーカーを開発しました。また,併せてこのスピーカーの特長を最大限発揮させるための支持架台や支持鉄塔の開発も行いました。

本稿では,このホーンアレイスピーカーおよびこれらの支持架台や支持鉄塔の概要および適用事例について紹介します。

 
■ギャップ式避雷装置の長波尾小電流雷に対する有効性についての実験的研究(No.56)
概要

昔から怖いものの代名詞として「地震,雷,火事,親父」と言われており,自然現象では地震に並んで雷がある。雷は天空と地上間における電気現象で,対策の取り難い自然現象である。その雷が発生すると強大なエネルギーにより被害が発生する。いわゆる「雷害」はICT(情報通信技術)社会の現代における大きな問題のひとつであり,とりわけその対策が急がれている。

これまで,雷害対策を設計・施工してきた現場をみると,特に,山頂に設置された無線中継所(山頂負荷)における事故例は悲惨である。雷害対策ツールとして,耐雷トランス(雷保護装置)や避雷器(SPD)などが使用されているが,これらが破壊されたり焼損するだけでなく,守るべき通信機器の基板や電子部品も被害を受けているのが現状であり,解決すべき課題である。 

その課題を解決するために開発したシンプルな雷撃サージ対策用「ギャップ式避雷装置」の性能を確認するために,非常に大きなエネルギーを発生する長波尾小電流の実験を行った結果,良好な性能が確認できた。

なお,この実験は2011年に財団法人電力中央研究所 電力技術研究所 大電力試験所で実施した。

 
■建築物等の雷保護について(No.48)
概要

近年,雷現象に関する研究が世界的に進展し,蓄積された多数の定量的データを基に,諸外国の基準や国際規格が整備されつつある。IEC(国際電気標準会議)では,1990年にIEC 61024-1"Protection of structures against lightning, Part 1: General principles"を制定し,国際的に使用されている。JIS規格は,1952年に制定されて数回の改正が加えられているが,国際規格との整合化をはかることを目的として,IEC 61024-1を基準とする規格改正が行われた。

改正された規格(JIS A 4201-2003:建築物等の雷保護)は,建築物を対象とする外部雷保護システムと建築物内部の設備・機器を対象とする内部雷保護システムに区分し,それぞれ雷保護基準を示し,目的に相応する個々の性能を関係者の責任で選択することを原則とした規格である。

 
■工業標準化法の改正について(No.47)
概要

JIS(Japanese Industrial Standard:日本工業規格)は,様々な鉱工業製品の種類,寸法,品質・性能,安全性およびそれらを確認する試験方法などの規格値や基準を定めたものである。

平成16年6月9日に工業標準化法が改正され,平成17年10月1日から新JISマーク表示制度が施行された(平成20年9月30日までは新旧両制度が併存)。この制度改正により,JISマーク表示制度は,国際的に整合した信頼性の高い認証制度になるとともに,民間活力を最大限に活用して,事業者や消費者の多様なニーズに対応できる利便性の高い制度となった。

今回の制度改正に伴い,旧JISマーク表示制度で認証を受けている弊社の東北ガルバセンターと東北工場は,新JIS表示認定工場の認証を受けるための申請手続を行い,「JIS H 8641 溶融亜鉛めっき」で認証(認証番号:QA0207014)を受けることができた。


■雷害対策に関する先端技術概論(No.44)
概要
 電力や通信の安定的な供給は,現代社会におけるエネルギー政策やIT化促進に対して重要な課題のひとつです。電力や通信の障害により,これらの供給が中断することは,企業活動のみならず家庭生活の上でも,生命,財産,生産効率などの喪失の危機をもたらします。
 停電の原因の中で,対策の取り難いものが自然災害であり,その中で最も多く約半数を占めるのが雷によるものです。雷による被害は停電のみでなく,電圧や周波数の変動をもたらし,様々な機器を誤動作させ,それらによる損失も非常に大きいものとなります。
 今やITの拡大進展は著しく,学校や行政機関のほか企業や一般家庭でも情報ネットワークが構築されつつありますが,それらに使用される端末機器や家電製品では電圧の変動に非常に敏感な半導体が多用されています。その一方で著しい電圧変動を引き起こす雷に対する対策は万全とは言えません。
 それら雷による被害は,夏には主に太平洋側,冬には日本海側に集中しているものの,地球の温暖化や都市部のヒートアイランド現象などにより,一年を通じて全国的にあるいは地球規模的に急速に拡大しつつあります。
 電子政府の実現には,中断することのない安定な情報通信ネットワークの構築が必要条件であり,そのネットワークを下支えするインフラのひとつにマイクロ回線用や移動通信用などの無線中継所があります。それらの無線中継所は,電波の見通し上,海岸部,山間部,山頂部に建設されることが多く,これらは雷が最も好む場所であることから雷害も発生しやすいと言えます。それら雷害の大半は直撃雷ですが,誘導雷によることもあります。これらに対する対策は,十分とは言えず,毎年各地の無線中継所が雷害に遭遇し,多額の損失を蒙っています。
 そのような状況から,電力系,通信系関係,その他のあらゆる分野で抜本的な雷害対策が求められています。雷害は,これらの施設全体を計画する段階で,電源系,通信系,計測信号系等に関して,実際に効果のあるしっかりした対策を設計に盛り込み,知識と経験に基づく確実な施工を行うことで多くは防ぐことが可能です。施工の途中からや,あるいは施工後では工費が重むことになります。
 本紙では,雷に関する性状や基本的な対策を整理するとともに,すでに,この4年間に70箇所の既設無線中継所に対策を施し,多いところでは年に数十回の雷撃を受けながらも,対策後は1件の被害もなく,その効果が実証されつつある効果的かつ経済的な雷害対策を紹介します。


■鉄塔のバーチャル仮組システムの応用(No.39)
概要
 従来の人手による仮組検査に代わるシステムとして当社で開発した鉄塔のバーチャル仮組システムは,2次元CADでは検証が難しい現寸上の不具合を発見して是正するシミュレーションシステム(バーチャル仮組)と製作段階の品質を保証する部材検査で構成されます。
 バーチャル仮組とは,2次元のCAD現寸によって作成された鉄塔構造(製作)データを実物通りに再現するための3次元データに変換して,コンピュータ上でバーチャルに仮組立を行うシステムで,現寸上の不具合の発見以外にも応用しています。
 バーチャル仮組の応用例として,鉄塔の建替えによる部材の当り検討やCGによる景観シミュレーションを行うための3次元構造図の作成などについて概要を紹介します。


■建築構造用鋼材(SN材)の鉄塔への適用に関する一考察(No.38)
概要
 1994年に建築構造用圧延鋼材(JIS G 3136)が,そして1996年に建築構造用炭素鋼管(JIS G 3475)がJIS規格化されたことに伴い,最近では,鉄骨造建築物に建築構造用鋼材(以下,SN材)が使用されることが多くなってきている。また,建築基準法(鋼構造設計規準)に基づいて設計された通信用鉄塔も鉄骨造建築物に倣い,SN材が採用される例が散見される。
 しかし,SN材の市場性はまだ低く,鉄塔を製作する段階において,設計で採用されたSN材の一部が入手できないなど,材料手配上の問題が発生している。
 そこで,本紙ではSN材制定の背景や規定の内容を紹介するとともに,鉄塔を設計する段階で,SN材を採用することの是非並びに採用する際の問題点や注意点について考察する。



■鉄塔のバーチャル仮組システムの紹介(No.37)
概要
 図面通りの部材を製作し,現地での組み立てに支障がない製品を納入するために,鉄塔の製作分野では,従来から仮組検査によって鉄塔の組立て状態および製品(加工)精度の確認を行ってきました。仮組検査で発見される品質上の問題の発生原因は,現寸の間違いと製作の間違いの2種類に分けられ,それらの問題点の大部分は現寸ミスに起因しています。したがって,現寸の間違いを検出して是正することが,製品の不具合を発生させないための有効な方法です。
 当社で開発した鉄塔のバーチャル仮組システムは,2次元のCAD現寸によって作成された鉄塔構造データを3次元データに変換して,コンピュータ上でバーチャルに仮組立を行い,現寸段階の品質を保証するシミュレーションシステムと,製作段階の品質を保証する部材検査で構成されます。
 これまでの人手による仮組検査に代わるバーチャル仮組システム(バーチャル仮組+部材検査)について概要を紹介します。


 
■避雷設備と接地設備(No.37)
概要
 建築物の設計では,建築物の崩壊が起こらないように,また建築物の長期利用に対して腐食損傷が起こらないように,安全性や耐久性など建築物に要求される性能を満足するように検討を行っている。
 鉄塔の場合,安全性や耐久性などの要求性能を確保するために,風や地震さらには積雪などの自然現象による外力に対して構造計算を行い,使用部材や構造を決定している。
 しかし,自然現象のひとつである落雷に対する安全性や耐久性については,構造計算で確かめることができない。
 そこで,鉄塔が支持する送電線や通信用アンテナの機能を落雷から守るための方策のひとつとして,鉄塔頂部に地線や避雷針を設置している。さらに,鉄塔の接地を適切に行うことで滞留電流や漏電による事故が起こらないようにしている。
 近年,鉄塔を含む建築物や工作物の設計・施工の規準が,使用材料や構造などを細かく規定する仕様規定から要求性能のみを規定する性能規定へと移行している中で,避雷設備についても同様の動きが見られるようになってきた。
 従来,建築基準法の避雷設備に関する規定は仕様規定のみであったが,平成12年の政令改正で,「雷撃によって生じる電流を建設物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができるもの」とする規定が定められて性能規定に移行した。
 また,(社)電気設備学会内に設置された「建築物等の避雷設備JIS原案作成委員会」では,JIS A 4201 「建築物等の避雷設備(避雷針)」を仕様規定から性能規定へ移行するための改訂作業がほぼ完了している。
 このように避雷設備の性能規定化が進められているため,その規定を満足するために必要となる「避雷設備」と「接地設備」の概要について紹介する。


 
■高周波超音波による溶融亜鉛めっき鋼板の板厚測定(No.37)
概要
 溶融亜鉛めっき鋼材のめっき厚は,電磁膜厚計を用いて非磁性体と磁性体の境界までの厚みを測定している。しかし,めっき層は亜鉛・鉄−亜鉛の合金層(鉄の含有率が変化)から成り立っており,電磁膜厚計では非磁性体と磁性体が混在するめっき層のどこまでの距離を測定して膜厚として表示しているのかわからないのが実状である。
 そこで,鋼材の厚みを計測する高周波超音波(以下、超音波)厚み計に着目した。超音波試験を利用してめっき厚などを測定することで,測定精度を明らかにすることは新たな測定技術を確立する意味で意義がある。
 本論文ではマイクロメータ・電磁膜厚計・超音波厚み計を使用してめっき層を含めた鋼材の板厚を測定し,結果の比較検討を行い,超音波による測定の妥当性を評価した。


 
■各種橋梁の固有振動測定(No.36)
概要
 橋梁の固有振動数や減衰定数などは,橋梁の交通荷重だけでなく,地震および風などによる動的挙動 を把握するために必要である。すなわち衝撃係数,交通騒音,交通振動公害,交通耐荷力,耐震性およ び耐風性などの研究の基礎データとなる。
 この研究では形式などが異なる8種類の橋について,振動実測と設計計算書に基づいた固有値解析の 結果を比較検討した。これによって実際の構造物が設計計算書から推定される剛性に近い剛性をもつこ とが裏付けられた。また,古くなった橋や設計資料の無くなった橋について,振動実測からその橋の剛 性を推定し,供用に足るかどうかを推定する方法の資料を与えた。



■「航空法施行規則」の一部改正について(No.34)
概要
 航空保安施設である航空障害灯や昼間障害標識の設置に関し,建設地周辺の住民への配慮,夜間の景 観への配慮,設置コストおよび維持コストの縮減,省エネルギーへの関心の高まりなどの社会的ニーズ に応えるために,航空法施行規則の一部が改正されました。
 改正の概要は,以下の通りです。
 1)中光度白色航空障害灯が新たに開発され,航空保安施設の一つとして追加された。
 2)60mを越え,150m未満の鉄塔では,中光度白色航空障害灯を設置した場合に,昼間障害標識の 設置が省略できるようになった。
 3)航空障害灯の設置位置に関する基準が変更になった。
 この中光度白色航空障害灯を昼間時,常時点灯することにより,昼間航空障害標識としての塗装,い わゆる赤白塗装を省略できるなどのメリットがあります。
 そこで,「航空法施行規則の一部改正」の鉄塔に関する部分の概要を説明するとともに,航空障害灯 の灯器の種類と性能ならびにその取付け位置について記述します。



■鉄塔関連法規(No.26)
概要
 通信用鉄塔は建築基準法上、工作物として扱われ、建築基準法をはじめ多くの建築法規の規定を満足す る必要があります。ただし、電気事業者の電力保安通信用鉄塔については、電気事業法他の通産省省令の 規制を受けるため建築基準法の適用からは除外されています。なお電気事業者とは、発電、送電および電 気鉄道の3事業者を言い、日本電信電話株式会社殿等の電気通信事業者は、電気事業者とは異なります。 したがって、電気通信事業者の建設する通信用鉄塔は、建築法規の規定に従うことになります。
 本号では、建築基準法を中心に建築法規のうち、鉄塔に関する下記の内容について概略を記述します。
 読者の方々には、今後、通信用鉄塔を建設する場合の計画、仕様決定および申請等の手続きの参考とし て頂ければ幸いです。
 1)建築基準法とは
 2)建築基準法上鉄塔とは
 3)鉄塔を鉄骨造とする場合の規定
 4)鉄塔の構造計算について
 5)鉄塔の付帯設備について
 6)申請等の手続きについて
 7)その他の鉄塔関連建築法規



■送電鉄塔や無線鉄塔の構成材の1つである
電縫鋼管の座屈耐力及び座屈後挙動
(No.25)
概要
 電縫鋼管は冷間成形加工により製造されているため、製造過程で複雑な塑性加工履歴を受けて、バウシ ンガー効果や加工硬化の影響を含んでおり、また製造過程で大きな残留応力が封入されている。このため、 圧縮材として用いた場合、座屈荷重、座屈後強度にこれらの因子が影響を及ぼす。
 本研究では、バウシンガー効果と加工硬化の影響を考慮した応カ−ひずみ関係を用いて、まず電縫鋼管 の製造過程履歴の解析を行い、残留応力分布、塑性ひずみ履歴の影響を明らかにする。その鋼管を用いて、 管軸、管周方向の2軸応力状態を考慮した中心及び偏心圧縮柱の座屈解析を行い、座屈荷重、座屈後強度 と残留応力、バウシンガー効果、加工硬化の関係を検討する。



■「紹介」韓国電力公社 送変電建設部発行
「756KV送電システム−建設計画と技術検討」翻訳
(No.24)
目次

(1)765KVプロジェクトの背景
   1.電力負荷予測と電源開発計画
   2.システム電圧の昇圧

(2)765KVシステム建設計画
   1.送電線
   2.変電所

(3)765KVシステムの技術検討
   1.送電システムの検討
   2.送電線プロジェクト
   3.変電所プロジェクト



■送電鉄塔や無線鉄塔の構成材の1つである
電縫鋼管の材料特性と局部座屈耐力
(No.24)
概要
 電縫鋼管は送電鉄塔や無線鉄塔の構成材の1つとして使われている。特に近年の大型化にともない電縫 鋼管は鉄塔の主要な構成材の1つとなっている。
 電縫鋼管材は製造過程で冷間成形加工を受けているため、バウシンガー効果と加工硬化の影響をもって おり、さらに管軸、管周方向の複合残留応力が封入されている。また溶接加工の影響で、溶接線近傍の材 料特性が他の部分と異なっている。このため原鋼板に比して、降伏応力は高くなるが、局部座屈時のひず みや引張試験における伸び率は小さくなっている。
 本研究では製造過程で塑性ひずみ履歴と溶接加工の影響を受けた電縫鋼管の材料特性を定量的に分析す る。その上で電縫鋼管の応力ひずみ関係の近似表示方法を提案する。さらに局部座屈が生じ始める時点の 応力、および、ひずみを実験的に特定する方法を示す。



■墜落防止システムについて(No.23)
概要
 架空送電鉄塔のような地上高の高い支持物に於ける作業時及び移動時の墜落災害を防止する方法として、 囲いのある足場を鉄塔に設置し、墜落することが不可能な設備を設ける方法があるが、これには大きな費 用を要する。
 簡便な手段として人体を絶えず安全帯で支持物に繋ぎ止めておく方法があるが、支持物が大きくなると 移動範囲が広くなり、安全帯の掛け替えに相当大きな労力を要することとなる。
 今回紹介する墜落防止システムは、昇降足場、歩廊、足摺に添わせてレール(ロープ)を設置し、専用 の安全器によって人体とレール(ロープ)を繋ぎ、安全器は人体の移動に追従してレール(ロープ)上を 摺動する構造を備え、万一墜落すると直ちにレール(ロープ)を安全器が強固に掴み僅かな墜落距離の範 囲で人体を保持し、墜落災害を防止するシステムである。



■鉄塔材の海外調達について
「東京電力(株)保渡田線の韓国製作に関する報告」
(No.22)
概要
 日本電炉鰍ヘ、平成5年から鉄塔材の海外からの調達に関し、数度に亘る海外調査団の派遣を行い、電 力会社殿との協議を重ねて、その可能性と方法について検討を行ってきた。
 今回、東京電力鞄aの御諒解を得て、韓国 現代重工業株式会社へ66kv保渡田線鉄塔材の一部の製 作を依頼し平成7年7月14日に納品を完了、引続き8月28日に当該全鉄塔の組立を完了した旨の連絡 を得たのでその経緯と結果をまとめた。



■熔接鋼管協会メーカー製電縫鋼管の鉄塔への適用(No.22)
概要
 最近、熔接鋼管協会メーカー製電縫鋼管が送電鉄塔に使われるようになってきた。ここでは、熔協メー カー製鋼管の一般的用途とその需要状況、熔協メーカー製鉄塔用鋼管の規格、製造方法、及び品質特性に ついて紹介する。



■鋼管製造技術の現状(No.17)
概要
 最近の鋼管の利用範囲の拡大に伴う鋼管工場での製造技術、および新製品開発、更に鋼管関連技術とし て製品の検査や使用性能評価を試験する技術の進歩について概説する。