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- ■損傷を受けた鉄塔の仮補強(または応急対策)事例について(No.75)
- 概要
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暴風,地震,津波,あるいは豪雪などが鉄塔に大きな損傷を与えることがある。送電・通信用鉄塔などはインフラを支える重要設備であることから,これらの災害による鉄塔の倒壊や損傷による機能不全や停止は社会に甚大な被害をもたらすことになる。そのため,鉄塔が大きな損害を受けた際は一刻も早い機能復旧が望まれる。
デンロ技報No.72,No.73において「過去の鉄塔部材取替え事例について(その1)(その2)」と題して既設鉄塔部材の腐食や自然災害などによる損傷部材の取替え工法について紹介したが,これらは基本的に恒久的な補強として実施されたものである。
本稿ではその前段階,すなわち自然災害などが原因で損傷を受けた直後の鉄塔に,最低限の機能を保全するために行った仮補強(または応急対策)方法の代表的な事例を紹介する。
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- ■山形鋼鉄塔の主柱材取替装置および主柱材取替方法について
(沖縄 本部線工事概要紹介)(No.75)
- 概要
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前号(No.74)では,沖縄電力株式会社,株式会社沖電工および株式会社デンロコーポレーションの3社共同で新たに開発した「山形鋼鉄塔の主柱材取替装置および主柱材取替方法」の工法および施工性確認試験の概要について紹介した。
今回,沖縄電力株式会社管内の実線路において,本工法による主柱材取替え工事を施工したので,その概要について紹介する。
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- ■山形鋼鉄塔のベンド上主柱材取替工法の紹介(No.74)
- 概要
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経年劣化で鉄塔部材に腐食や断面欠損などの損傷が生じた場合,部材の取替えを行うことがある。取替え部材が主柱材である場合には,大きな応力を支持しているため,一般的には取替え作業は大掛かりとなる。特にベンド上主柱材については,電力線を支持している腕金が取り付いていることから,取替え作業はより大掛かりで費用も大きくなり,線路停止などの制約も生じる。
そこで今回,沖縄電力株式会社,株式会社沖電工および株式会社デンロコーポレーションの3社共同で安全性,経済性および施工性に優れた「山形鋼鉄塔のベンド上主柱材取替工法」を新たに開発(特許出願中)したので,その概要について紹介する。
今回開発した山形鋼鉄塔のベンド上主柱材取替工法には以下の特長がある。
- @ サポートパイプの両端にピン構造を採用することで主柱材の転びが異なる箇所においても,装置の取付けが可能
- A 左右に腕金がある場合,片側停電のみで作業が可能
- B 取替え装置を,主柱材を挟んで対角方向に据えることから,腕金を取り外すことなく施工が可能
- C 複数のパーツに分割されたサポートパイプの組合せにより,任意の主柱材長さに対応可能
- D 主柱材取外しにより腹材の応力伝達が途切れてしまう場合には,仮設斜材を用いて応力伝達が可能
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- ■過去の鉄塔部材取替え事例について(その2)(No.73)
- 概要
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当社では,既設鉄塔部材の取替えを安全かつ効率的に行うために,種々の鉄塔部材取替え工法を開発してきた。また,当該鉄塔部材取替え工法が実鉄塔で採用された際には,その成果をデンロ技報で紹介してきた。本稿では,前号(No.72)に引き続きこれまでのデンロ技報から,鉄塔部材取替え事例を整理し,現在主として使用している工法について改めて紹介する。
前号では,鋼管鉄塔と山形鋼鉄塔の主柱材(中間部)の取替え工法について紹介した。本稿では,山形鋼鉄塔の主柱材(最下節)の取替え工法および腹材の取替え工法について紹介する。
また,66kVクラスの鉄塔のBL上を対象にして新たに開発した「腹材取替え用仮設冶具」についても紹介する。
更に,自然災害で損傷した鉄塔に対して,本稿で紹介した山形鋼鉄塔の主柱材(最下節)取替え工法と腹材取替え工法を併用して改修した事例についても紹介する。
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- ■過去の鉄塔部材取替え事例について(その1)(No.72)
- 概要
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既設鉄塔では,経年劣化で鉄塔部材に腐食や断面欠損が生じた場合に部材を取り替えることがある。その取替え部材が主柱材の場合は,部材に大きな力が生じているため,取替え作業が大掛かりとなることが多い。また,取替え部材が腹材の場合は,部材に作用する常時荷重が大きいとボルトの取外しが困難であったり,部材取外しの際における骨組強度の低下に対する鉄塔の補強が必要になる場合がある。
このため,当社では既設鉄塔部材の取替えを安全かつ効率的に行うために,種々の鉄塔部材取替え工法を開発してきた。また,当該鉄塔部材取替え工法が実鉄塔での部材取替え工事に採用された際には,その成果をデンロ技報で紹介してきた。そこで,過去の鉄塔部材取替え事例を整理し,現在主として使用している工法について,改めて紹介する。
本稿では,これまでのデンロ技報から,全2回のシリーズの1回目として,主柱材(中間部)の部材取替え事例について紹介する。
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- ■クライミングクレーン吊下げ工法を用いた鉄塔解体撤去工事の紹介(No.70)
- 概要
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NTT西日本 島根支店屋上の通信鉄塔は,1972年に建設された地上高100.7mのパイプトラス鉄塔で,島根県内のマイクロ回線網の中枢を担っていた。さらに,近隣にドコモ島根ビル鉄塔が建設されるまでは,松江駅周辺では最も高い建造物であり,また赤白の塗装が目立っていたため,長らく当地のランドマーク的な存在でもあった。しかし,マイクロ回線の多くは光ファイバー回線に置き換わったことで,近年ではパラボラアンテナが撤去されてその役目を終えていた。
そこで,同鉄塔を解体撤去することとなり,その工事を当社が受注した。工事はクライミングクレーンによる解体であるが,局舎屋上面に荷重をかけずにクライミングクレーンを構築するという特殊な工法「クライミングクレーン吊下げ工法」を用いた。
本稿ではその工法と解体工事について紹介する。
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- ■山形鋼鉄塔の主柱材複数脚付加応力除去と籠トラス補強方式による不同変位対策(No.57)
- 概要
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地震や豪雨などの自然災害あるいは,周辺の土木工事による影響などで地盤が変動し,そこに構築されている構造物の各基礎が垂直方向や水平方向に異なる変位をすることを不同変位という。
平成23年(2011年)に発生した東北地方太平洋沖地震の規模はM9.0と大きく,家屋の損傷や斜面崩壊・土砂災害など甚大な被害をもたらしたが,鉄塔においても不同変位による部材変形などの被害が多数認められた。
そのような不同変位対策として,デンロ技報No.40では,山形鋼鉄塔の主柱材1脚のジャッキアップおよび塔体幅調整による付加応力除去対策工法の概要を紹介している。さらにデンロ技報No.46では,主柱材1脚のジャッキアップによる付加応力除去の対策事例を紹介している。
今回は,周辺の土木工事が原因で不同変位したと思われる山形鋼鉄塔の主柱材3脚をジャッキアップ(3脚のうち最大ジャッキアップ量は124mm,残る1脚は切断のみでジャッキアップなし)し,付加応力を除去し,鉄塔の傾きを修正した。さらに,今後の不同変位の進行に備えた措置および,ジャッキアップ量124mmによって発生する鉄塔上部と脚部の傾斜違いによる曲げ点の補強として,脚部間に籠トラスを設けた。
上記対策工事に関する現地調査,立体解析による強度検討,部材製作および現地工事の概要について紹介する。
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- ■地震に伴う津波により破損した鋼管鉄塔の仮補強方法について(No.55)
- 概要
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地震や台風などの自然災害によって鉄塔に設計荷重以上の大きな荷重が働くと,部材の変形や破断などが発生する場合がある。変形や破断が生じた部材では鉄塔に加わる設計荷重を安全に負担することはできないため,早急に補強や部材交換を行う必要がある。また,鉄塔の損傷箇所によっては補強や部材交換が困難であるため,鉄塔の建替えが必要となる場合もある。
本稿では2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって発生した津波により,最下節の主柱材が変形し,更に,腹材・補助材が損失した鋼管鉄塔の仮補強方法について紹介する。
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- ■鋼管鉄塔の主柱材取替え工法について(No.54)
- 概要
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既設鉄塔では,経年劣化で鉄塔部材に腐食による断面欠損が生じるなどの理由で,部材の取替えを行うことがある。その取替え部材が主柱材の場合,部材に大きな力が生じているため,部材の取替え作業が大掛かりとなることが多い。更に,鋼管鉄塔の場合には,部材取替え作業の難易度は高くなる。
しかし,主柱材取替えの必要性があるため,安全性,経済性および施工性に優れたジャッキアップ工法を開発し,既設鋼管鉄塔の主柱材取替えに採用したので,その工法および工事の概要を紹介する。
今回開発した鋼管鉄塔の主柱材取替え工法には次の特徴がある。
- @ 主柱材を取り外すことで腹材に強度不足が発生する場合や,腹材による応力伝達が途切れる場合には,仮設材を取り付けることにより,これらの問題を解決することで主柱材の取替えを行うことができる。
- A 主柱材の取替えは,取替え範囲内に既設主柱材,新設主柱材のどちらかが存在した状態で行うことができるため安全である。
- B 複数のパーツに分割されたサポートパイプを組み合せることで,任意の長さの主柱材取替えに対応することができる。
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- ■山形鋼鉄塔の主柱材取替工法について(No.51)
- 概要
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経年劣化で鉄塔部材に腐食や断面欠損などの損傷が生じた場合,部材の取替えを行うことがある。その取替部材が主柱材である場合には,主柱材が大きな応力を支持しているため,一般的には取替作業は大掛かりとなる。
鉄塔上部の主柱材については,包込工法などにより主柱材の取替えが行われているが,鉄塔下部については,部分的な主柱材取替えが可能な工法が確立されていなかった。
そこで,ジャッキ装置を使用した新たな主柱材取替工法を3社が共同で開発し,鹿児島県種子島に建設されている既設の山形鋼鉄塔の主柱材取替えに採用したので,その工法および工事の概要を紹介する。
今回開発した山形鋼鉄塔の主柱材取替工法には以下の特徴がある。
- @ 主柱材に孔明け加工を施すことなく締結金具ボルトでジャッキ装置の取付けができる。
- A 装置を主柱材に固定する金具の取付位置が上下に移動できる。
- B 複数のパーツに分割されたサポートパイプの組合せにより任意の主柱材長さに対応することができる。
- C 装置は最大でも50kg程度の部品に分割して運搬できるため,アクセスの悪い山間部など様々な工事環境に対応することができる。
- D 主柱材長さが2パネル以上で主柱材の取り外しにより腹材の応力伝達が途切れてしまう場合には,仮設腹材を用いて応力を伝達させることができる。
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- ■腹材取替え装置の紹介(No.48)
- 概要
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近年,鉄塔の老朽化により,部材の取替えを行うことが多くなってきています。
また,地震などの災害により基礎が不同変位し,被害を受けた鉄塔の補修で部材取替えを行うこともあります。
腹材取替え時には,ボルトの取り外しが困難な場合や,部材の取り外しによる骨組強度の低下により,鉄塔の補強が必要となる場合があります。
今回,取付ボルトを容易に取り外すことができ,部材の取り外しに伴う鉄塔の補強を行うことができる安全で汎用性のある腹材取替え装置を開発しました。
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- ■ヘリコプターによる無人化鉄塔解体工法の紹介(No.47)
- 概要
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近年,鉄塔撤去工事を行う場合,高所作業量の低減,仮設備のコスト低減,環境問題への対応および工期短縮などのメリットからヘリコプターによる鉄塔解体が各電力会社殿で実施されている。
従来のヘリコプターによる鉄塔解体工法と比べて,安全で効率的かつ簡便な工法を株式会社サンテックで開発し,鉄塔解体用治具の製作および切断位置の検討を株式会社デンロコーポレーションで行った。
本工法には,以下の特徴がある。
- 解体鉄塔を回収する直前までの塔上作業が不要となる。(無人化)
- ヘリコプターの吊能力に合わせて切断位置を決定することができる。