工事用機器および工法
 
■損傷を受けた鉄塔の仮補強(または応急対策)事例について(No.75)
概要

暴風,地震,津波,あるいは豪雪などが鉄塔に大きな損傷を与えることがある。送電・通信用鉄塔などはインフラを支える重要設備であることから,これらの災害による鉄塔の倒壊や損傷による機能不全や停止は社会に甚大な被害をもたらすことになる。そのため,鉄塔が大きな損害を受けた際は一刻も早い機能復旧が望まれる。

デンロ技報No.72,No.73において「過去の鉄塔部材取替え事例について(その1)(その2)」と題して既設鉄塔部材の腐食や自然災害などによる損傷部材の取替え工法について紹介したが,これらは基本的に恒久的な補強として実施されたものである。

本稿ではその前段階,すなわち自然災害などが原因で損傷を受けた直後の鉄塔に,最低限の機能を保全するために行った仮補強(または応急対策)方法の代表的な事例を紹介する。

 
■山形鋼鉄塔の主柱材取替装置および主柱材取替方法について
(沖縄 本部線工事概要紹介)
(No.75)
概要

前号(No.74)では,沖縄電力株式会社,株式会社沖電工および株式会社デンロコーポレーションの3社共同で新たに開発した「山形鋼鉄塔の主柱材取替装置および主柱材取替方法」の工法および施工性確認試験の概要について紹介した。

今回,沖縄電力株式会社管内の実線路において,本工法による主柱材取替え工事を施工したので,その概要について紹介する。

 
■山形鋼鉄塔のベンド上主柱材取替工法の紹介(No.74)
概要

経年劣化で鉄塔部材に腐食や断面欠損などの損傷が生じた場合,部材の取替えを行うことがある。取替え部材が主柱材である場合には,大きな応力を支持しているため,一般的には取替え作業は大掛かりとなる。特にベンド上主柱材については,電力線を支持している腕金が取り付いていることから,取替え作業はより大掛かりで費用も大きくなり,線路停止などの制約も生じる。

そこで今回,沖縄電力株式会社,株式会社沖電工および株式会社デンロコーポレーションの3社共同で安全性,経済性および施工性に優れた「山形鋼鉄塔のベンド上主柱材取替工法」を新たに開発(特許出願中)したので,その概要について紹介する。

今回開発した山形鋼鉄塔のベンド上主柱材取替工法には以下の特長がある。

  • @ サポートパイプの両端にピン構造を採用することで主柱材の転びが異なる箇所においても,装置の取付けが可能
  • A 左右に腕金がある場合,片側停電のみで作業が可能
  • B 取替え装置を,主柱材を挟んで対角方向に据えることから,腕金を取り外すことなく施工が可能
  • C 複数のパーツに分割されたサポートパイプの組合せにより,任意の主柱材長さに対応可能
  • D 主柱材取外しにより腹材の応力伝達が途切れてしまう場合には,仮設斜材を用いて応力伝達が可能
 
■過去の鉄塔部材取替え事例について(その2)(No.73)
概要

当社では,既設鉄塔部材の取替えを安全かつ効率的に行うために,種々の鉄塔部材取替え工法を開発してきた。また,当該鉄塔部材取替え工法が実鉄塔で採用された際には,その成果をデンロ技報で紹介してきた。本稿では,前号(No.72)に引き続きこれまでのデンロ技報から,鉄塔部材取替え事例を整理し,現在主として使用している工法について改めて紹介する。

前号では,鋼管鉄塔と山形鋼鉄塔の主柱材(中間部)の取替え工法について紹介した。本稿では,山形鋼鉄塔の主柱材(最下節)の取替え工法および腹材の取替え工法について紹介する。

また,66kVクラスの鉄塔のBL上を対象にして新たに開発した「腹材取替え用仮設冶具」についても紹介する。

更に,自然災害で損傷した鉄塔に対して,本稿で紹介した山形鋼鉄塔の主柱材(最下節)取替え工法と腹材取替え工法を併用して改修した事例についても紹介する。

 
■過去の鉄塔部材取替え事例について(その1)(No.72)
概要

既設鉄塔では,経年劣化で鉄塔部材に腐食や断面欠損が生じた場合に部材を取り替えることがある。その取替え部材が主柱材の場合は,部材に大きな力が生じているため,取替え作業が大掛かりとなることが多い。また,取替え部材が腹材の場合は,部材に作用する常時荷重が大きいとボルトの取外しが困難であったり,部材取外しの際における骨組強度の低下に対する鉄塔の補強が必要になる場合がある。

このため,当社では既設鉄塔部材の取替えを安全かつ効率的に行うために,種々の鉄塔部材取替え工法を開発してきた。また,当該鉄塔部材取替え工法が実鉄塔での部材取替え工事に採用された際には,その成果をデンロ技報で紹介してきた。そこで,過去の鉄塔部材取替え事例を整理し,現在主として使用している工法について,改めて紹介する。

本稿では,これまでのデンロ技報から,全2回のシリーズの1回目として,主柱材(中間部)の部材取替え事例について紹介する。

 
■クライミングクレーン吊下げ工法を用いた鉄塔解体撤去工事の紹介(No.70)
概要

NTT西日本 島根支店屋上の通信鉄塔は,1972年に建設された地上高100.7mのパイプトラス鉄塔で,島根県内のマイクロ回線網の中枢を担っていた。さらに,近隣にドコモ島根ビル鉄塔が建設されるまでは,松江駅周辺では最も高い建造物であり,また赤白の塗装が目立っていたため,長らく当地のランドマーク的な存在でもあった。しかし,マイクロ回線の多くは光ファイバー回線に置き換わったことで,近年ではパラボラアンテナが撤去されてその役目を終えていた。

そこで,同鉄塔を解体撤去することとなり,その工事を当社が受注した。工事はクライミングクレーンによる解体であるが,局舎屋上面に荷重をかけずにクライミングクレーンを構築するという特殊な工法「クライミングクレーン吊下げ工法」を用いた。

本稿ではその工法と解体工事について紹介する。

 
■山形鋼鉄塔の主柱材複数脚付加応力除去と籠トラス補強方式による不同変位対策(No.57)
概要

地震や豪雨などの自然災害あるいは,周辺の土木工事による影響などで地盤が変動し,そこに構築されている構造物の各基礎が垂直方向や水平方向に異なる変位をすることを不同変位という。

平成23年(2011年)に発生した東北地方太平洋沖地震の規模はM9.0と大きく,家屋の損傷や斜面崩壊・土砂災害など甚大な被害をもたらしたが,鉄塔においても不同変位による部材変形などの被害が多数認められた。

そのような不同変位対策として,デンロ技報No.40では,山形鋼鉄塔の主柱材1脚のジャッキアップおよび塔体幅調整による付加応力除去対策工法の概要を紹介している。さらにデンロ技報No.46では,主柱材1脚のジャッキアップによる付加応力除去の対策事例を紹介している。

今回は,周辺の土木工事が原因で不同変位したと思われる山形鋼鉄塔の主柱材3脚をジャッキアップ(3脚のうち最大ジャッキアップ量は124mm,残る1脚は切断のみでジャッキアップなし)し,付加応力を除去し,鉄塔の傾きを修正した。さらに,今後の不同変位の進行に備えた措置および,ジャッキアップ量124mmによって発生する鉄塔上部と脚部の傾斜違いによる曲げ点の補強として,脚部間に籠トラスを設けた。

上記対策工事に関する現地調査,立体解析による強度検討,部材製作および現地工事の概要について紹介する。

 
■地震に伴う津波により破損した鋼管鉄塔の仮補強方法について(No.55)
概要

地震や台風などの自然災害によって鉄塔に設計荷重以上の大きな荷重が働くと,部材の変形や破断などが発生する場合がある。変形や破断が生じた部材では鉄塔に加わる設計荷重を安全に負担することはできないため,早急に補強や部材交換を行う必要がある。また,鉄塔の損傷箇所によっては補強や部材交換が困難であるため,鉄塔の建替えが必要となる場合もある。

本稿では2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震によって発生した津波により,最下節の主柱材が変形し,更に,腹材・補助材が損失した鋼管鉄塔の仮補強方法について紹介する。

 
■鋼管鉄塔の主柱材取替え工法について(No.54)
概要

 既設鉄塔では,経年劣化で鉄塔部材に腐食による断面欠損が生じるなどの理由で,部材の取替えを行うことがある。その取替え部材が主柱材の場合,部材に大きな力が生じているため,部材の取替え作業が大掛かりとなることが多い。更に,鋼管鉄塔の場合には,部材取替え作業の難易度は高くなる。

 しかし,主柱材取替えの必要性があるため,安全性,経済性および施工性に優れたジャッキアップ工法を開発し,既設鋼管鉄塔の主柱材取替えに採用したので,その工法および工事の概要を紹介する。

 今回開発した鋼管鉄塔の主柱材取替え工法には次の特徴がある。

  • @ 主柱材を取り外すことで腹材に強度不足が発生する場合や,腹材による応力伝達が途切れる場合には,仮設材を取り付けることにより,これらの問題を解決することで主柱材の取替えを行うことができる。
  • A 主柱材の取替えは,取替え範囲内に既設主柱材,新設主柱材のどちらかが存在した状態で行うことができるため安全である。
  • B 複数のパーツに分割されたサポートパイプを組み合せることで,任意の長さの主柱材取替えに対応することができる。
 
■山形鋼鉄塔の主柱材取替工法について(No.51)
概要

経年劣化で鉄塔部材に腐食や断面欠損などの損傷が生じた場合,部材の取替えを行うことがある。その取替部材が主柱材である場合には,主柱材が大きな応力を支持しているため,一般的には取替作業は大掛かりとなる。

鉄塔上部の主柱材については,包込工法などにより主柱材の取替えが行われているが,鉄塔下部については,部分的な主柱材取替えが可能な工法が確立されていなかった。

そこで,ジャッキ装置を使用した新たな主柱材取替工法を3社が共同で開発し,鹿児島県種子島に建設されている既設の山形鋼鉄塔の主柱材取替えに採用したので,その工法および工事の概要を紹介する。

今回開発した山形鋼鉄塔の主柱材取替工法には以下の特徴がある。

  • @ 主柱材に孔明け加工を施すことなく締結金具ボルトでジャッキ装置の取付けができる。
  • A 装置を主柱材に固定する金具の取付位置が上下に移動できる。
  • B 複数のパーツに分割されたサポートパイプの組合せにより任意の主柱材長さに対応することができる。
  • C 装置は最大でも50kg程度の部品に分割して運搬できるため,アクセスの悪い山間部など様々な工事環境に対応することができる。
  • D 主柱材長さが2パネル以上で主柱材の取り外しにより腹材の応力伝達が途切れてしまう場合には,仮設腹材を用いて応力を伝達させることができる。
 
■腹材取替え装置の紹介(No.48)
概要

近年,鉄塔の老朽化により,部材の取替えを行うことが多くなってきています。

また,地震などの災害により基礎が不同変位し,被害を受けた鉄塔の補修で部材取替えを行うこともあります。

腹材取替え時には,ボルトの取り外しが困難な場合や,部材の取り外しによる骨組強度の低下により,鉄塔の補強が必要となる場合があります。

今回,取付ボルトを容易に取り外すことができ,部材の取り外しに伴う鉄塔の補強を行うことができる安全で汎用性のある腹材取替え装置を開発しました。

 
■ヘリコプターによる無人化鉄塔解体工法の紹介(No.47)
概要

近年,鉄塔撤去工事を行う場合,高所作業量の低減,仮設備のコスト低減,環境問題への対応および工期短縮などのメリットからヘリコプターによる鉄塔解体が各電力会社殿で実施されている。

従来のヘリコプターによる鉄塔解体工法と比べて,安全で効率的かつ簡便な工法を株式会社サンテックで開発し,鉄塔解体用治具の製作および切断位置の検討を株式会社デンロコーポレーションで行った。

本工法には,以下の特徴がある。

  • 解体鉄塔を回収する直前までの塔上作業が不要となる。(無人化)
  • ヘリコプターの吊能力に合わせて切断位置を決定することができる。


■ND工法による鉄塔嵩上げについて(No.44)
概要
 送電線路では,線下の道路・鉄道の高架化あるいは建物や樹木が建設当初より高くなることなどに伴い,鉄塔の高さを高くすることが必要となる場合がある。この場合,仮線路を形成しておいて,旧鉄塔を撤去し,元位置で高鉄塔に建替える方法が採用されることがあるが,この方法は工事費が高価なものとなり,また,長期間の停電が実施できない系統構成の送電線路においては,極めて困難である。
 このため,架線されたままの既設鉄塔をせり上げ,その下部に必要なパネルの鉄塔部材を接合する嵩上げ工法およびこれに関する装置が開発されている。
 弊社の嵩上げ工法およびその装置は,デンロ技報No.21)で既に紹介しているように以下に示す特徴がある。

@ 架線されたままで送電鉄塔を嵩上げすることができるため,仮線路を設ける必要がなく,停電期間を短くすることができる。
A 装置は,広範囲の塔体幅に対応できる構造となっているので,嵩上げ後の塔体幅を,用地状況に合わせて自由に決めることができる。
B 地上での機械操作と嵩上げ用部材の地上組立てが主な作業となるため,高所作業がなくなり,作業を安全に容易に行うことができる。
C 基礎部は既設基礎に新規の基礎を結合させることで,嵩上げ後の鉄塔の基礎部に必要なコンクリート量を抑えると共に,嵩上げ装置用の基礎も共有する構造とすることができる。
 今回,平成15年に中国電力株式会社殿 JR西日本岡山線 No.5鉄塔に上記2号機の装置を使用して3.5mの嵩上げ工事を行ったので,工事実績と合わせてND工法による鉄塔嵩上げについて紹介する。


■仮設ステージ「エプロンデッキ」の紹介(No.41)
概要
 「エプロンデッキ」は,山地等の斜面にクレーン等の重機を一切使用せずに,組立てできる仮設ステージです。これまでに鉄塔の建設現場や,索道基地,資材の仮置き場などで数多くの使用実績があります。


■汎用型仮腕金の開発(No.41)
概要
 電線高上げ工事で長時間の停電工事ができない場合,仮設工事用腕金を用いて電線を支持し,仮設工事を実施している。このとき,仮設工事用腕金は設置する鉄塔の形状に応じて,その都度製作する方法をとっていた。
 しかし,この方法では,仮設工事用腕金を設置する都度腕金本体の設計および製作が必要となる。また,使用後の仮設工事用腕金は別の鉄塔に流用することができないため,一回限りの全損とするしかなく,経済性の面でも不利である。
 そこで,これらの問題を解決すべく,鉄塔の形状に応じて使い回しが可能な汎用型仮腕金を開発した。さらに,汎用型仮腕金の実規模試験を実施し,構造面,機能面,施工面で問題がないか検証を行った。
 汎用型仮腕金は以下の特徴がある。
 1)シンプルな構造で,組立て,取付けが簡単である。
 2)腕金先端構造をボルト1本による可動構造としているので,一定内の塔体幅であれば複数の鉄塔で使い回しが可能である。
 3)アングル材で構成されているので,積み重ねての保管が可能である。


■アングル鉄塔の基礎不同変位矯正工法(No.40)
概要
 1995年の兵庫県南部地震以降,2000年の鳥取県西部地震,2003年の宮城県沖・宮城県北部での地震,2004年の新潟県中越地震など大型の地震が頻繁に発生し,家屋の損傷や斜面崩壊・土砂災害による被害が発生している。
 地震が発生した際に鉄塔が受ける被害としては,地震動そのものによる被害の他に,地盤の変形によって鉄塔基礎が不同変位し,鉄塔部材に付加応力が発生することによって,部材が変形する場合がある。
 デンロ技報No.35では,鉛直不同変位に対する対策として,最も沈下した脚の最下フランジ部をジャッキアップし,スペーサーを挿入して主柱材長さの調整を行うことで,鉛直不同変位による付加応力の除去を行い,水平変位に対する対策は,不同変位の影響が及んでいない節点位置と基礎不同変位後の最下の節点位置を基準に部材長さを調整することにより基礎の不同変位による付加応力の除去を行う対策の概要を紹介した。
 今回は,アングル鉄塔を対象に,基礎の不同変位による付加応力の除去対策工法の概要を紹介する。


■基礎が不同変位した鉄塔の補修対策(No.35)
概要
 平成12年10月6日に発生した鳥取県西部地震は,マグニチュードが7.3の地震規模で,鳥取県境港市や 日野町で震度6強を観測した。地震動そのものが送電用鉄塔におよぼした被害はなかったものの,地盤 の変形による鉄塔基礎の不同変位に伴う鉄塔部材への付加応力により,一部の部材に変形が見られた。
 そこで,基礎の不同変位に伴う鉄塔の応力解析を行い,強度不足になる鉄塔の応急対策を行うと共に, 付加応力の大きい鉄塔については基礎の不同変位による付加応力の除去対策の検討を行った。
 鉛直不同変位に対する対策として,ジャッキアップ装置を開発し,最も沈下した脚の最下フランジ部 をジャッキアップしてスペーサーを挿入し,主柱材長さの調整を行った。水平変位に対する対策は,不 同変位の影響が及んでいない節点位置と基礎不同変位後の最下の節点位置を基準に部材長さを算定して 部材長の調整が可能な新規部材を製作して部材を取替えた。
 これらの対策を行った鉄塔について対策前後の応力変化を測定したところ,基礎の不同変位による付 加応力は大部分が除去された事が確認できた。


■径間防護ネット工法用仮アームの紹介(No.32)
概要
 これまで超高圧送電線新設工事における重要工作物横過個所では、鉄塔足場〜新設鉄塔に設置した仮アー ム間に防護ネットを架設して、横過物を防護する方法をとっていた。
 防護ネットとは、道路・鉄道および既設送電線を横断する箇所の上空に展張して、架線工事時の電線垂下 に伴う接触・停電事故を未然に防ぐためのものである。
 しかし松島幹線新設工事では、この防護ネットを支持する鉄塔足場の用地確保が困難な箇所や、鉄塔足場 の数が多くなり工事費が高額となる箇所が多く発生した。
 そこで、鉄塔足場が不要になり、経済性・施工性の面で従来の工法よりも有利な、鉄塔〜鉄塔間に防護ネ ットを直接施設する「径間防護ネット工法」が導入されることになった。
 これに伴い、径間防護ネットを支持する仮アームを新たに製品化し、試験場での実証試験、実線路での現 場施工試験の結果をフィードバックした上で、松島幹線新設工事で実線路にご採用頂いた。
 本仮アームは、その安全性と施工性の高さで好評を頂いている。
 本報ではこの径間防護ネット工法用仮アームについて、その概要と製品化の経緯を報告する。


■送電線工事における伐採木のリサイクル方法(No.31)
概要
 山間部に鉄塔を建設する場合、資材を運び込む索道を確保しなくてはならない。索道を確保するために、 何万本もの木が伐採される。伐採された木はその場に放置されたり、廃棄物処分されたりする。
 伐採木が廃棄物化されるのには、いくつか理由があり、伐採木の運搬の問題、利用方法の問題、加工 の問題、費用の問題などである。物理的条件の悪い山間部での作業には、コストダウン効果と環境問題 の解決を両立することは難しいと考えられてきた。
 しかし、環境問題が注目されている昨今、我々は、伐採木の運搬、有効利用、利用後の現地処分を目 的に改善案をまとめ、リサイクル方法を開発したので本報で紹介する。


■TOP工法による鉄塔高上げに伴う基礎部の検討(No.25)
概要
 中部電力浜松電力センター送電課で独自に考案された「TOP工法」は、住宅が密集する市街地において、 鉄塔敷地の買い増しを伴わずに元位置で鉄塔を立て替える工法である。この工法は、既設基礎柱体部の脚 材の外側の新しい脚材を接合し、上部は包み込み工法と同様に、既設鉄塔の外側に新しい鉄塔を組み立て ていく工法である。
 TOP工法では、脚材が基礎柱体部で曲げ点を有する構造となる。この曲げ点には付加水平力が作用す るため、FEM解析により脚材および基礎柱体部の安全性について検討を行なった。また、主柱材のころ びが変化し基礎にモーメントが作用するため、基礎の安定への影響についても検討を行ったのでここに報 告する。


■エプロンデッキ(鉄塔用仮設ステージ)の紹介(No.23)
概要
 山岳の傾斜地で鉄塔建設に必要となる部材置場を簡易に確保できるエプロンデッキ(鉄塔用仮設ステー ジ)の特徴と組立方法、並びに、今後の展望について紹介します。
 ここで、紹介するエプロンデッキ(APRON DECK)はフランスの仮設材専門メーカーであるアント レポーゼ社(ENTREPOS社)が鉄塔工事用として開発したものを、株式会社義盛実業(EUSUNG社、 韓国)が製作しました。日本国内での販売・リースを弊社が総代理店として扱います。


■鉄塔用鋼管へのTMCP鋼の適用(No.18)
概要
 最近の大型送電鉄塔に使われるようになった鉄塔用高張力鋼鋼管、STKT590について、製造とその品 質特性を解説する。本鋼管にはTMCP鋼が適用されており、その技術的ポイントと応用例について概説 する。


■大型鋼管鉄塔の主柱材取替工法の紹介(No.18)
概要
 大型鋼管鉄塔の主柱材取替工法(以下、ジャッキアップ工法と呼ぶ)を今回開発した。
 本工法では、まず取り替える既設鉄塔の主柱材の上下に固定架台と2本の支柱を取付けた後、支柱直下 の下部架台上に収め油圧ジャッキで、主柱材継手部を数センチ押し広げて主柱材を交換する。このよう に、鉄塔を解体することなく、現状のままで必要部分だけ取り替えることができるため、安全性の向上、 工期の短縮および省力化が図れる。
 以上のような特徴をもつ「ジャッキアップ工法」の概要を紹介する。


■架線工事用仮腕金の紹介(No.16)
概要
 500KV級の送電線架線工事で防護ネットを張るときに使用する「架線エ事用仮腕金」を開発しました。 架線工事用仮腕金は、防護ネット展張用として従来から使用されている足場鉄塔の代りに、本設備鉄塔に 仮腕金を取付けて防護ネットを張ります。このような工法を採れば、足場鉄塔に必要な基礎および組立工 事が無くなるため、工期が短縮でき、さらに組立が簡単で、運搬・保管時の占有スペースも小さくなりま す。
 以上のような特徴をもつ架線工事用仮腕金の概要を紹介します。


■パイプ鉄塔せり上げ工法について(No.15)
概要
 パイプ鉄塔せり上げ工法の概要と施工例を紹介します。
 当社では、1983年に電源開発株式会社殿、開発電気株式会社殿と共同で、アングル鉄塔せり上げ工法 (NDK工法)を開発し、営業テリトリーを東日本(開発電気株式会社)と西日本(日本電炉株式会社)に 分けて受注活動を続けてきました。
 NDK工法は、4本の油圧シリンダーを使って鉄塔を引き上げる方式のせり上げ工法です。この工法に 用いる装置本体や制御システムは、数多くの自動生産設備を設計・製作している当社の設備事業部によっ て開発しました。
 また、せり上げ工法に伴う鉄塔本体の技術的な検討や施工管理は、当社鉄塔事業部の技術グループが担 当し、安全・高信頼度・短工期の工法として好評を博しています。
 NDK工法は、装置の構造による制約のため、アングル鉄塔を対象としていますが、今回、四国電力株 式会社殿で、パイプ鉄塔のせり上げ工事が必要となり、NDK工法を改良したパイプ鉄塔せり上げ工法 (NDK-P工法)を採用していただき、1991年6月18日に完了いたしました。
 本稿では、NDK-P工法の概要と施工例について紹介します。なお、NDK工法の詳細につきましては、 デンロ技報2(1986年)を参照して下さい。


■NDかさ上げ工法(NDK工法)について(No.2)
まえがき
 近年、都市近郊部および植林地を通過する送電線において、線下の用地事情などにより高鉄塔化を必 要とする鉄塔が年々増加している。
 これに対する現在の対策としては、仮線路を形成して、旧鉄塔を撤去し、高鉄塔に建て替る工法が採 用されているが、この方法は工事費が高価なものとなり、仮線路を形成する余地のない人家密集地、ま たは長期間の停電の実施出来ない系統構成の送電線路に対してその実施は極めて困難である。
 これがため最近、架線状態のままで鉄塔をせり上げ、その下部に必要なパネルの鉄塔部材を接合する かさ上げ工法およびこれに関する装置、工具の開発が進められている。
 現在までに発表されている上記の工法および装置は約4〜5種類あるが、それぞれ固有の特徴があり、 採用に当ってはかなりの条件、または制約を受ける場合が多い。
 このような現況において、安全確実性、汎用性、施工性、経済性に適合した最も実用的な鉄塔せり上 げ装置の開発が各界より要望されている。
 当社等(電源開発、開発電気、日本電炉)はこの点に着目し、昭和57年8月、3社で共同研究を開始 し、昭和58年8月当社琴平鉄塔試験場において試作1号機による実規模公開試験を無事終了した。
 昭和60年6月上記1号機によって電源開発、只見幹線第300号鉄塔(275KV、2回線、330mm2× 2ACSR、PA型直線鉄塔)の12Mのかさ上げ工事が行われ、計画通りに完了した。
 中国電力殿の予て要望から、1号機より小型で更に改良された2号機を製造し昭和60年5月実 規模試験で性能を確認し、昭和60年9月中国電力、竹原火力線第96、97号鉄塔(110KV、2回線、 330mm2×2ACSR、A1型 直線鉄塔)2基かさ上げ高さ各々19.5M,18.0Mのかさ上げ工事が行わ れた。
 2号機によるこのかさ上げ工事も計画通り順調に進み、工事中テレビ、新聞社等の報道もあり好評価 の中で予想通り完了した。
 以下本文では、1、2号機によって、実送電線のかさ上げ工事を体験したのでこの体験をもとにかさ 上げ計画、事前検討、設計、施工計画等の工法手順および実送電線の工事実績について紹介する。