風
 
■不連続な断面をもつ角柱に作用する風直角方向風力に関する実験的研究(No.55)
概要

角柱に作用する風力についての研究は数多くある。 近年,都市部においてバルコニーのついた高層住宅が頻繁に建設されている。 言い換えれば,都市部には不連続な断面を持つ高層建築がたくさんあるということである。 そこで,本研究では不連続な断面をもつ角柱に風直角方向風力が作用した時の空力応答や風力特性,特に風力特性について調べた。 実験では,不連続な断面をもつ角柱が風直角方向の風力低減に最も効果的であることが分かった。 本研究では,不連続な断面をもつ角柱の風圧場と正方形断面をもつ角柱の風圧場を比較するために複素POD解析を採用した。


■建築物荷重指針(2004)の紹介(No.40)
概要
 社会的ニーズの多様化に伴い,建築・土木分野での設計は従来の仕様設計から性能設計に移行してきており,これらの設計において荷重の採り方,解析手法,強度評価など設計者の判断による部分が大きくなっている。
 このうち設計荷重は,その使用目的や使用期間,経済性,重要性などを考慮して設定されるが,建築物の設計では,建築基準法を基本とし,これを補足するために日本建築学会から発行されている『建築物荷重指針』を参考にする場合がある。
 この『建築物荷重指針』は,昭和50年に刊行されて以来改定が続けられ,2004年には最近の性能設計への対応などのために全般的な見直しが行われた。
 その設計内容は風荷重,地震荷重,雪荷重の他多岐にわたるが,本紙では風荷重に絞り,その設計内容を紹介する。


■渦励振による鋼管部材の振動(No.35)
概要
 送電鉄塔や無線鉄塔などの塔状鋼構造物は,常に自然風にさらされている。
 鋼管部材などの円形断面では,背後にできる規則的な渦により,風向直角方向に変動力が作用し,部 材の固有振動数と一致すると共振して風向直角方向に振動する現象が発生することがあり,渦励振と呼 ばれている。
 ここでは,避雷針支持柱および鋼管鉄塔の断面材,腹材の渦励振による振動の例および対策例を示す。



■建築物模型周りの流れ場に関する研究(No.33)
概要
 地球上ではありとあらゆる種類の風が起こる。例えば,季節風や偏西風などスケールの大きなものか ら,高層建築物の周りに発生するビル風などといった局所的なものなど様々である。さらに無数の風が 複雑に入り乱れるため,全く同じ風が吹くということはない。仮にある一定の風が吹いていたとしても, 低層建築物に当たるのか、それとも高層建築物に当たるのかなど,建築物の形状によって風の流れは大 きく異なってくる。
 しかし風の流れが異なるといっても,風そのものを直接見ることはできない。なぜなら,風は空気の 移動であり,その空気が目に見えないからである。しかし,落ち葉が舞ったりあるいは上空にある雲の 流れを観察することによって,風の流れを間接的に見ることができる。この落ち葉や雲は、人間の目と 風との間の“媒介物”の役割を果たしている。つまり、そのような“媒介物”があれば,風の流れを視 覚的にとらえる事が可能となる。
 本研究では,その“媒介物”として煙を用い,単純な形状をもつ模型の可視化風洞実験を行い,模型 周りにできる流れの様子について調べた。



■風と渦励振(No.32)
概要
 鉄塔・タワー等の塔状構造物や、ドーム・大屋根等の大スパン構造物の構造体を構成しているトラス部 材として、近年の加工技術の進歩や接合方法の改良により、荷重に対する方向性がなく、座屈や曲げにも 優れた剛性をもつ円形断面の鋼管が多く用いられるようになってきている。
 円形の断面をもつ構造部材や2次部材が風を受けたとき、部材の背後に交互に放出される渦により、部 材には風向と直角方向に変動揚力と呼ばれる周期的な風力が作用し、ある状況下において部材は風と直角 方向に大きく振動を生じる。この現象は渦励振と呼ばれ、部材の耐風設計上考慮すべき項目の1つである。 ここでは円形断面をもつ構造部材や2次部材の渦励振現象について説明する。



■ファジィ推論とリアルタイム観測データを用いた台風接近時の風速風向予測システム(No.29)
概要
 本稿では、ファジィ推論と送電用鉄塔上に既設の風向・風速計で観測されたデータを用いて、台風接 近時の風速と風向の予測システムを紹介する。
 このシステムでは、まず、ファジィ推論を台風の風速・風向予測に適用するために、過去の台風接近 時の観測データと位置データに基づく予測ルールのチューニング法について、検討を行った。さらに、 チューニングされた予測ルールと測定データを用いて、異なる台風接近時の風速・風向予測を行った。
 シミュレーション結果からは、今回提案した解析法の有効性か確かめられた。  


 
■2次元静止円柱の変動風力発生機構(No.28)
概要
 亜臨界レイノルズ数の範囲では、静止円柱上に発生したカルマン渦が引き起こす変動圧が周期的な揚 力を生むことはよく知られている。しかしカルマン渦は円柱から離れて形成されるため、カルマン渦が 円柱側面にかかる変動圧に対して直接的な影響を及ぼすとは考えられない。
 そこで本研究では、亜臨界レイノルズ数域において応力が円柱上で周期的に発生するメカニズムを、 同時多圧測定装置と流れの可視化技術を駆使して調査した。その結果、円柱上の変動圧を直接左右する のは発生したカルマン渦自体ではなく、円柱の側面付近で形成されカルマン渦の流れに翻弄された剥離 せん断層の動きであることが解った。また、円柱上の淀み地点と剥離地点の変動は揚力の変動と同期し ており、両方の変動がストローハル数と同一の周波数をもっていることが解った。
 本報では、カルマン渦の流れと、分離せん断層や円柱上に発生する変動圧との相関関係を明らかにし ている。