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- ■鉄塔補修工事用可動式防護ネットの紹介(No.75)
- 概要
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送電鉄塔や無線鉄塔などの鉄塔類は日本国内で30万基を超えて建設されており,社会インフラとして貢献しています。
これらの鉄塔類は通常,溶融亜鉛めっきが施されており,高い防錆効果を発揮していますが,経年経過でメンテナンスが必要となり,塗装工事や部材,ボルト・ナットの交換工事などが必要となります。
上記の工事の際は,落下物の防護や塗料の飛散防止を目的に鉄塔の周囲にネットを設置することが一般的です。これまでの多くは鉄塔の全体または部分的に足場材を用いてネットを設置して,補修作業を実施してきましたが,足場材,ネットの取付け・取外しは多くの時間や費用を必要としていました。
そこで,弊社では,工事段階に応じて必要な部分だけ防護して作業することができる可動式防護ネットを開発しました。これにより,安全の確保を損なうことなく,工事全体の効率面を向上させることができます。本稿では可動式防護ネットの概要と実際の使用例を紹介します。
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- ■鋼管鉄塔主柱材内面塗装工法の紹介(No.74)
- 概要
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通常,鋼管鉄塔の鋼管内面も溶融亜鉛めっきが施されていますが,鋼管内面にも空気,雨水,海塩粒子などが侵入するので,鋼管外面と同じように経年劣化による腐食が発見されることがあります。しかし,その進行は鋼管外面のように外からの目視点検で確認できません。
このため,鋼管内面も計画的な点検や補修が必要となります。
弊社では,鋼管内面点検・補修ロボットを開発し,内面調査実施後に補修時期や補修方法を提案し,内面補修を実施してきました。
本稿では鋼管鉄塔主柱材内面のケレン,塗装,主柱材周辺の養生,膜厚管理ならびに新技術を使った「鋼管主柱材内面塗装工法」を紹介します。
本工法を実施した鋼管内面の施工前後の状態は以下のようになります。
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- ■鋼管鉄塔主柱材内面の異物回収ロボット「キャッチマン」の紹介(No.71)
- 概要
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既設の鋼管鉄塔の点検で,主柱材内部に空き缶やボルトなどの異物が発見されることがあります。これらの異物は経年劣化により腐食が進行し, 内部にもらい錆が発生するため, 鉄塔本体の寿命に影響します。
鉄塔の構造上,異物の取り出しは非常に困難であり,仮に取り出すとなれば大掛かりな装置や工事が必要になり, 高額の費用が発生します。
弊社では, これら異物の回収作業を容易に短時間で行うことができる鋼管鉄塔主柱材内面の異物回収ロボット「キャッチマン」を開発しましたので, 本稿で紹介します。
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- ■「板バネ式ライナー圧着工法」の紹介(No.69)
- 概要
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鋼管鉄塔の内面は,外面と同様に,経年によって溶融亜鉛めっきの減耗,発錆,孔明きなどの劣化や腐食が進行します。そのため,内面点検を実施し,劣化や腐食などの異常個所の状態,位置および大きさを確認した上で,内面補修または部材取替えを実施しています。
従来の内面補修工法では,外面の補修塗装と同様に素地調整(ケレン)を行って内面の腐食因子等を十分に除去した後で,防錆塗装を行うのが一般的でした。しかし,鋼管鉄塔の腹材の端部には継手金物により狭隘になっているため,その内面を素地調整することは容易ではありませんでした。
そこで,素地調整を省略できる鋼管内面の補修工法として『板バネ式ライナー圧着工法』を東京電力パワーグリッド株式会社殿と当社で共同開発しましたので,本稿ではその概要を紹介します(特許出願中)。
なお,本工法は部材の耐力アップを図るものではなく,腐食の進行を止めるものになります。
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- ■亜鉛溶射工法の紹介(No.68)
- 概要
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鋼材の防錆技術として,その表面に亜鉛の塗膜を形成させる方法としては,溶解した亜鉛浴の中に浸漬させる「溶融亜鉛めっき工法」が一般的です。この溶融亜鉛めっきには,浴槽の他,大掛かりな加熱設備などが必要なため,現場で既設鋼材に適用することはできません。
このため,現場での既設鋼材の防錆補修には,高濃度亜鉛末塗料を含めた塗装が一般的ですが,溶融状態に加熱した亜鉛を高速で鋼材表面に微粒子として吹き付け,皮膜を形成させる「亜鉛溶射工法」もあります。
この亜鉛溶射は塗料と比べると,防錆力が高く鋼材との密着性も良好なので長期間の防錆工法として有効です。しかしながら,補修前の表面処理の品質管理や補修作業に比較的大きな機材が必要になり費用が高くなることから,亜鉛溶射の施工の普及は進んでいません。
そこで,当社では,溶射メーカーの協力を得て,鋼構造物の延命化技術「タワーメンテナンス」のひとつとして,鉄塔などの屋外鋼構造物の高所でも施工できる低コスト亜鉛溶射工法を確立しました。その後,現地での施工実績も積み上げてきましたので,本稿では現地施工可能な亜鉛溶射工法について紹介します。
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- ■鋼管鉄塔主柱材の内面補修多機能ロボット「スリムマルチマン」の紹介(No.67)
- 概要
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鋼管鉄塔の鋼管内面は,鋼管外面と同様に雨水や海塩粒子の影響で劣化します。特に取替えが難しい主柱材は,取替えが必要になる前での早めの補修が必要です。
一般に主柱材内面の劣化部の補修は大掛かりな工事になりますが,当社では1台で調査から補修まで幅広い作業が可能な鋼管内面補修多機能ロボット「スリムマルチマン」を自社開発し,現在4台を運用しています。
本稿では,その「スリムマルチマン」について紹介します。
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- ■鋼管鉄塔最下節主柱材内部へのモルタル充填工法の紹介(No.66)
- 概要
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鋼管鉄塔の最下節主柱材には水抜き孔(止水板)があり,上部の隙間から鋼管内部に侵入した雨水や鋼管内部の結露により発生した水分は,通常,水抜き孔から鋼管外部へ排出されます。しかし,水抜き孔が設けられていない場合や水抜き孔がコンクリート等で塞がっている場合は,排水されず鋼管内部に水が溜まります。水が溜まり続けると鋼管内部の腐食が進行したり,冬季に滞水の凍結膨張により鋼管部材に亀裂(損傷)が発生したりした事例が報告されています。
本稿では,鋼管内部に滞水が認められ,排水設備がない既設鉄塔への対策として,最下節主柱材に排水機能を持たせるための水抜き孔を設け,モルタルを充填した「鋼管鉄塔最下節主柱材モルタル充填工法」について紹介します。
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- ■鋼管鉄塔の鋼管腐食孔明部補修工法の紹介(No.63)
- 概要
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日本国内には30万基を超える送電鉄塔や通信鉄塔が建設されている。高度成長期の1970年前後には多くの鉄塔が建設され,これらの鉄塔は50年前後を迎えている。なかでも,鋼管鉄塔が多く建設されるようになったのは1970年代後半で,建設後40年以上経過しているものもある。
しかし,これらの既設鉄塔は経年劣化による腐食が問題となっており,腐食した部材は補修塗装などの対策が採られている。しかし,腐食が補修限界の時期を過ぎて進行し,断面欠損が生じた部材は強度低下を引き起こし,強度不足に至る場合には取替えが必要となる。さらに,送電鉄塔の場合は主柱材や腹材などの応力材の取替えが必要になると送電の停止や電線の移設などを伴う場合があり,補修期間が長期化し,かつ大規模な工事になる。
今回紹介する補修工法は,鋼管鉄塔において,腐食により断面欠損した鋼管部材を現地溶接を用いて補強するもので,この補修工法を採用することで部材の取替え(すなわち送電の停止,電線の移設)が不要になり,その結果大幅な工期短縮ができ,小規模での工事が可能となるなどの利点がある。
そして,新工法を採用するにあたっては,事前に現地を模擬した部分モデルでシミュレーション試験を実施し,溶接による補修部材への影響の範囲や,溶接後の防錆処置方法の確認を行い,安全性,施工性のよい方法となるように改善を行った。また,鋼管内面には当社で新たに開発した鋼管内面補修ライナー工法を採用した。
そこで,本稿では,昨年500kV鋼管鉄塔で採用した鋼管腐食孔明部補修工法の概要を紹介する。
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- ■無線通信用鋼管単柱無足場塗装工法(吊下げ型)のご紹介(No.62)
- 概要
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ライフラインを支えるため全国各地に鉄塔が建設されています。これらの鉄塔のほとんどは防錆処理として表面に溶融亜鉛めっきを施していますが,溶融亜鉛めっきは経年とともに劣化するため,延命対策として塗装工事が一般的に実施されます。
塗装工事は実塗装作業とは別に養生を兼ねた仮設足場の設置が必要となるため,その足場費用が大きなコストを占めています。そのため当社では,無線通信用鋼管単柱用に無足場工法で,かつ養生も問題なく,安全に塗装作業ができる装置を開発しました。
鉄塔の建設場所は様々であり山地,離島など資機材の運搬に多額の費用が発生する場所での塗装工事にDC式無足場塗装工法(吊下げ型)を適用することで仮設費等の大きなコストダウンが可能となりましたのでご紹介します。
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- ■自己組織化特徴マップを用いた塗膜劣化度診断支援システムの構築(No.62)
- 概要
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鋼材の腐食を抑制する方法として,被覆(めっき,塗装)による防錆が広く用いられる。しかし,経年劣化によって被覆が消失すると,鋼材自体が腐食し,鋼構造物の寿命に大きく影響する。そのため,定期的に現地調査を行い,どのような対策(腐食部材の取替え・再塗装など)を行うのかを判断することが重要となる。
一般的に,塗装された鋼構造物の劣化度判定は,見本帳に基づいて専門の診断技師が実施する。しかし,人の視覚による診断では,個人差による診断結果のばらつきが生じる。
そこで判定者による判定のばらつきをなくし,勘と経験のみに頼らず塗膜の劣化状態を定量的に評価することを目的とする塗膜劣化度診断支援システムを開発した。
塗膜劣化度診断支援システムは以下の2つの工程で構成されている。
フェーズT:
画像中の塗膜劣化領域と非劣化領域を峻別する工程
フェーズU:
フェーズTで出力された劣化領域峻別画像における塗膜劣化領域の分布性状から塗膜劣化程度を診断する工程
前稿(デンロ技報No.56)で紹介した塗膜劣化度診断支援システムでは,遺伝的アルゴリズムを用いた劣化部検出画像フィルターによって劣化部を同定している。本稿では,さらにシステムを改良した「画像全体の雰囲気」(光量,色彩,対象物,天候等)によって画像を分類する自己組織化特徴マップ(Self Organizing Map:SOM)を用いた塗膜劣化度診断支援システムについて紹介する。
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- ■鋼管鉄塔の内面調査と補修方法の紹介(No.61)
- 概要
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鋼管鉄塔に使用されている鋼管部材は,外面だけではなく内部にも溶融亜鉛めっきが施されています。鋼管内部には酸素と水が存在するため,鋼管内部も外部と同様に腐食が進行します。特に,鋼管鉄塔の主柱材の多くは各ジョイント部をボルト接合しているので,その接合面に隙間ができ,そこから空気や雨水が浸入して内部の湿潤状態が継続し,腐食を進行させる要因のひとつとなっています。そして,腐食が進行し,部材の板厚の減少や孔明が発生すれば,保有耐力が減少するため,部材が破損する可能性があり,鉄塔としての機能に支障を来たす可能性があります。これらを防止するため日頃から保守メンテナンスが必要となりますが,鋼管内部は外部と異なり簡単に点検ができません。そのため,定期点検時などに専用の調査ロボットを用いて適正に点検や診断を行う必要があります。点検や診断を行った結果,劣化の著しい部位,腐食の恐れのある部位がある場合は,補修ロボットや専用治具などで腐食の要因を早期に除去する必要があります。
また,鋼管鉄塔の腹材(斜材,水平材)には両端部に開口部があり内部の点検や補修は比較的容易に可能ですが,主柱材には大きな開口部がないため簡単には点検や補修ができません。
そのため,当社では鋼管鉄塔の点検,診断,補修を容易にするための専用装置や技術の開発を行い,実際に使用してきました。この中から代表的な鋼管内面に関する専用装置類の概要や性能,施工状況などについて紹介します。
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- ■山形鋼鉄塔の最下主柱材取替え工法について(No.61)
- 概要
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既設鉄塔では,経年劣化による腐食で鉄塔部材の断面が減少した場合などに,部材を取替えることがある。その取替え部材が最下主柱材の場合,それより下に主柱材取替え装置を取付けるスペースがないため,デンロ技報No.51で紹介したジャッキアップ工法(特許第3593612号,5158476号)では最下主柱材の取替えができなかった。
そこで,山形鋼鉄塔の最下主柱材取替えを行うために基礎材上部取替え工法と基礎材流用工法を九州電力株式会社,株式会社九建および弊社の3社が共同で開発し,基礎材上部取替え工法で1線路7基28本,基礎材流用工法で2線路3基12本の取替え工事を実施した(特許出願中)。
今回開発した山形鋼鉄塔の最下主柱材取替え工法には以下の特徴がある。
- @ 基礎材上部取替え工法は,最下主柱材の取替えと同時に基礎材上部の取替えも行うことができるため,基礎材地際部の腐食が著しく,改修が必要な場合に採用できる
- A 基礎材流用工法は,基礎材上部の取替えはできないが,掘削および基礎コンクリートのはつりを行わずに最下主柱材の取替えを行うことができるため,施工性が良く,基礎材地際部の改修が不要な場合に採用できる
- B 装置は最大でも50kg程度の部品に分割して運搬できるため,アクセスの悪い山間部など様々な工事環境に対応することができる
- C 主柱材の取外しで,強度不足材が発生する場合や,応力伝達が途切れてしまう場合には,仮設材を取り付けることで,安全に主柱材を取替えることができる
- D 複数のパーツに分割したサポートパイプの組合せにより,任意の主柱材長さに対応することができる
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- ■ピークアップ工法の紹介(No.60)
- 概要
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一般に,鉄塔部材は防錆のため表面に溶融亜鉛めっきを施します。しかし,溶融亜鉛めっきは,経年により劣化・減耗して徐々にその防錆機能が失われ,そのまま放置すると部材が腐食してきます。このように腐食が進んで部材が減厚すると,その部材が強度不足となる恐れがあるため,劣化度合いに応じて部材の補修や交換を行う必要があります。これは,鋼管内面でも同じであるため,鋼管内面についても定期的に調査し,必要に応じて部材の補修や交換を行うことが必要です。
送電用鋼管鉄塔には,地線が1条の場合と2条(場合によっては3条)の場合があります。地線が2条(地線腕金構造)の場合,主柱材頂部はボルトで蓋が固定されているだけなので,その蓋を外せば主柱材内面の調査および補修ができます。しかし,地線が1条または3条の場合は,主柱材頂部に三角ピークがあります。この三角ピークには,常に地線荷重が作用しているため,三角ピークを構成する部材を安易に取り外すことはできません。このため,これまで三角ピークを持つ鋼管鉄塔の主柱材内面調査および補修は,地線を移線したり,あるいは,主柱材に直径18mm程度の孔を明けたりして実施していたため,多くの手間がかかっていました。
そこで,治具を用いて地線を取り外すことなく,安全に三角ピークの主柱材を取り外すことができる工法を開発しました。この工法を採用すれば,三角ピークを持つ鋼管鉄塔の主柱材の内面について容易に調査や補修ができ,さらには,三角ピーク主柱材を交換することもできます。開発したこの工法を「ピークアップ工法」と名付けました(特許出願中)。
本稿では,この「ピークアップ工法」について紹介します。
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- ■画像処理による塗膜の劣化診断・評価システムの開発報告(No.56)
- 概要
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鋼材または溶融亜鉛めっき上に施された塗装は,やがては外部からの影響や塗料自体の経年劣化により「死膜」となって効果を失う。塗膜がその効果を維持できているかは,塗膜の劣化診断を行うことで判断できる。劣化診断から決定される再塗装時の下地の補修・調整は,塗膜の効果・寿命を左右する。それゆえに,現状の塗膜劣化度合を正確に把握することは,重要なポイントとなる。
一般に,塗装された通信鉄塔,送電鉄塔,鉄道鉄橋,道路鉄橋などの塗膜の劣化度判定は,それぞれに対する劣化程度の見本帳に基づいて,専門の診断技師が行っている。しかし,人の視覚に頼る診断では,定量的に判断するのは難しく,同じものに対しても診断者によって判定結果が異なる問題が生じる。
そこで,診断者による判定のばらつきをなくし,経験と勘のみに頼らずに塗膜の劣化状況を定量的に評価・把握することを目的として塗膜劣化診断・評価システムを開発した。
前報デンロ技報No. 55では,塗膜劣化診断・評価システムを用いた劣化診断の概要および実例を紹介した。本稿では塗膜劣化診断・評価システムの基本理論について紹介する。
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- ■塗装された鋼構造物の画像診断の紹介(No.55)
- 概要
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鋼構造物の腐食に対する保守・管理については,適切な点検を行い,どのような対策を講じればよいのかを判断するのが従来のやり方です。この従来のやり方に加えて,腐食に対する余寿命や,再塗装などの対策実施時期の予測を行うことも鋼構造物の長寿命化を図る上で重要です。
現状での塗装された鋼構造物の劣化状況調査は,長年の経験を持った熟練者が現地へ赴き,目視または写真による評価や色標との比較による判定を基にして行っています。しかし,人の視覚に頼る評価では定量的に判断するのは難しく,同じものを評価しても個人によってその判断が異なるといった問題が生じます。
塗膜の劣化診断を行うにあたり,適切な調査・診断を行うためには,塗膜の劣化状況を定量的に評価・把握することが必要です。
上記の背景を踏まえ,塗膜の劣化状況を定量的に評価・把握することを目的とし,デジタルカメラによって撮影した塗装された鋼構造物の写真を画像処理することによって塗膜の劣化度を判別し,塗膜の劣化進行を予測するシステムを構築しました。
本稿では,塗装された鋼構造物の画像を使った劣化診断の概要を紹介します。